【趣味のメダカ】 メダカ生産とその秘訣〜養殖センターを大解剖〜

こばなしを進めていく前段階と言ってはなんですが、カミハタにおいてどのようにしてメダカが生産されているのか、まずはそこから知って頂こうと思います。


指宿養殖センターと南九州養殖センター

指宿養殖センター
南九州養殖センター


弊社では、指宿養殖センター・南九州養殖センターの2拠点で主にメダカを生産しています。それぞれの養殖センターごとの特色に合わせた生産品種の選定など、 各センターの強みを上手く生かして高効率な生産を心がけています。それでは、各養殖センターのご紹介から始めましょう。


指宿養殖センター


たたき池・1tタンク・プラ舟・スイレン鉢など全部で500もの大小様々な飼育設備を用いて生産をおこなっています。年間の総生産数はなんと2,000,000匹。 あえてゼロを並べましたがいかがでしょう、その多さが伝わっているでしょうか。品種については、青メダカ・白メダカ、幹之メダカなどの一般種から オロチ・各種ラメメダカなどの変わり物品種、さらには販売用のメダカ稚魚まで100種以上ものメダカたちを生産しています。


これに加え育種にも精力的に取り組んでおり、次世代のメダカ作出を目指しています。



温泉取水ポンプ

指宿養殖センターの一番の特色は、なんと言っても『温泉水』をメダカ養殖に利用していることです。この温泉水ですが、塩化物泉という泉質で、 若干の塩分を含みます。硫黄泉や炭酸泉などではないため、養殖に用いることが可能なわけです。指宿養殖センターには、全部で9つの源泉があり、 23℃〜36℃という幅広い温度帯の温泉水を利用することができます。これらの温泉水を飼育水・加温治療・産卵促進など様々な用途で活用しています。



ここで温泉水の利用法とそのメリットについてお話ししましょう。


温泉水の利用その1 〜飼育水への利用・高水温の温泉水のおかげで成長促進〜

温泉水を飼育水として用いることで、摂餌量や代謝の向上へと繋がり、明らかな成長促進効果が得られています。 例えば、メダカに関しては、ヒーターやボイラーなどの加温器具を使用することなく、1年で6サイクルもの累代が可能となっています。



温泉水の利用その2 〜暖房としての利用・ハウス内に温泉水を流して暖房効果〜

指宿は、東洋のハワイとも呼ばれ、比較的温暖な気候ではありますが、それでも年に数日ほど氷点下を記録します。 そんな日でも、ハウス内の気温が15℃を切ることはほとんどなく、最も湯量が豊富なハウスに関しては、 外気温が氷点下3℃のときに25℃を示していたのを覚えています。この暖房効果のおかげで、メダカたちの成長に大きなアドバンテージが得られています。



温泉水の利用その3 〜治療への利用・加温治療もバッチリ〜

どんなに気をつけても、愛情を注いでも、どうしても発生してしまう『病気』。その治療を行う際にも温泉水が重要な役割を果たします。 観賞魚飼育を経験された方々はもうおわかりかも知れませんが、治療を行う際、その多くの場合に『加温』をすることで治癒が早まるという傾向があります。 これは私たち人間にも当てはまることで、風邪をひいたときには、暖かくして栄養のあるものを食べてゆっくり休みますよね。 ここ指宿養殖センターでは、加温治療を行う際に30℃〜36℃の温泉水を利用し、病気の早期治療に役立てています。



温泉水の利用その4 〜採卵への利用・産卵促進効果〜

メダカは、春先から夏にかけて産卵期を迎えます。そのため、水温が低下する秋口〜冬にかけては産卵がストップしてしまい、 これでは安定した生産をおこなうことは出来ません。産卵の条件として、メダカでは18℃の水温の確保が必要とされていますが、 指宿養殖センターでは、温泉水を用いて親魚を管理することで、1年を通して安定的な採卵と生産に成功しています。





南九州養殖センター


池・1tタンク・プラ舟など、合わせて200ほどの飼育設備を用いて、年間約1,200,000匹のメダカを生産しています。 南九州養殖センターの特色のひとつは、大規模生産が可能なこと。容量約20〜60トンの池でおよそ20,000〜50,000匹ものメダカを一度に生産します。 このビッグスケールの池を利用し、南九州養殖センターでは、クロメダカ・ヒメダカなど特に需要が高いメダカの生産をメインでおこなっています。

さて、指宿養殖センターには『温泉水』という際立った特色がありましたが、南九州養殖センターにも負けず劣らずな特色があります。それは『海水』と『井戸水』です。



南九州養殖センターは東シナ海に接しており、常時、新鮮な海水を豊富に利用することが可能です。これと同時に、井戸水もまた豊富に存在します。 海に近接している土地で井戸を掘ると、海水混じりの井戸水が出てしまうことが多く見られます。しかしながら、ここの井戸水は混じりっけなしの純淡水。 海水と淡水を同時に利用できること、それは、メダカの生産にとっては非常に大きなアドバンテージとなります。



海水と井戸水を同時に使用し、いわゆる『塩浴』をおこなうことは、病気の予防・治療などにつながります。南九州養殖センターでは、 この海水と井戸水を同時に使用した塩浴を定期的におこなうことによって、病気の発生そのものを抑制し、常に元気なメダカの生産に成功しています。 この定期塩浴を実施し始めて以降、寄生虫や細菌感染などによってメダカが大量死に至ることはなくなりました。 様々な場面で難無く塩浴を出来ることが、生産効率を大きく向上させています。

また、井戸水そのものも生産に役立っています。南九州養殖センターで揚水する井戸水は、18℃。この水温が楊貴妃や東天光など、 赤色が重要なメダカの生産に一役買っています。高水温環境下での飼育においては、メダカの代謝が向上し、色揚げ効果のある成分などが沈着しにくいとされています。 実際に、かつて指宿養殖センターでも楊貴妃の生産をおこなっていましたが、色揚がりの遅さに手を焼かされたものです。そこで、思いついたのが南九州の井戸水利用です。 効果はてき面。低水温環境下でじっくりと飼い込むことによって、より高品質なメダカの供給が可能になりました。

この他、育種については6年にわたり精力的におこなっています。表現型だけにとらわれず、眠っているであろう遺伝子レベルでの形質にも注意しながら交配に勤しんでいます。 日本国内の名だたる新品種メダカに肩を並べるその日を夢見て今日も頑張っています。

このように、指宿養殖センター・南九州養殖センターの2拠点が、それぞれの強みを生かしつつ、 連携しながらカミハタのメダカ生産の屋台骨を担っています。今後も『カミハタブリード』メダカにご期待ください。













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