ジュエルオーキッドと呼ばれる植物について

ランの多くは古くよりその花の美しさや香りにより世界中の人々を魅了し愛され、時に富の象徴や投機の対象になるほどで、 日本では江戸時代中後期よりランの仲間の葉芸(葉の美しさや斑入りなど)を楽しむ文化が発展し、今でも伝統園芸(古典園芸)の 一大ジャンルとして根強く支持されています。

ジュエルオーキッド(Jewel orchids 意:宝石蘭)は、世界に750属以上、15000種以上もある ラン科(Orchidaceae)という巨大なグループに属しています。明確な定義はありませんが、比較的小型で綺麗な葉模様をもつ種類が ジュエルオーキッドと呼ばれて流通しています。またその多くが東南アジア原産です。



ジュエルオーキッドの魅力

何といってもその葉模様が最大の魅力です。キラキラと煌く葉脈模様はまさに宝石のよう・・・
そのキラキラは何故?・・・主に暗い森林に生息するジュエルオーキッドは葉全体で光合成を効率良くおこなうため、 あるいは受粉を媒介する昆虫を呼び寄せるため・・・それらが要因となり光を乱反射させる表面(葉脈)構造を持っているとされているようです。

日本でも古くから鑑賞されてきた侘び寂びある、素朴な美しさをもった自生種もあり、同じ種類でも一つとして同じ葉脈模様がないその特性は コレクション性をより高め、まさしく宝石と同じでそれぞれに個性があり、いくつも育ててみたくなります。

小型で場所を取らないため、好きな場所、器でその葉模様を鑑賞することができます 成長期ですら早くても一ヶ月に一枚程度の葉を展開するゆっくりとした成長をする植物ですので、新しい葉が出てくるたびにそれは宝石が誕生する瞬間のようでなんだか嬉しい気持ちにさせてくれることでしょう。 まるで宝石箱のようなコレクションをしたり、テラリウムのようなコケやシダとの相性も抜群で自然感溢れる楽しみ方もあります。屋外での栽培も工夫次第で可能です 工夫次第で楽しみ方は無限に広がります。





ジュエルオーキッドの育成について

ジュエルオーキッドの多くは温帯〜熱帯の薄暗く空中湿度の高い低地〜高地の森林床に自生していますのでこの自生環境に近づけた環境を用意できれば難しくありません。 下記の三点が重要です。


  • ● 過度な低温、高温を避ける
  • ● 高い空中湿度を維持する
  • ● 鉢内の通気性を確保する

◆◆育成に必要なもの◆◆

【 用土 】
→ミズゴケ、やしがらチップ、ラン用土が使えます 水はけの良いものを選びます。

→ミズゴケ、やしがらチップでの植え込みは「ふんわり」と茎をなるべく露出させて植え込みます。

→ミズゴゲは十分に水を吸わせた後軽く絞っても水が落ちない程度に絞ってから使用します。

→ラン用土植えでは底に軽石を置き水はけをよくしたり、用土と同サイズの軽石を混ぜて通気性を高めておきます。


【 器 】
→プラ鉢、素焼き鉢などが使えます。1.5号〜2.5号程度の鉢で十分です。素焼き鉢は乾きが早いため扱い難い場合があります。水草用スリット入りプラポットは通気性を確保しやすく密閉栽培に向いています。

→湿度保持の為、プラスチックケースや水槽等を使用しての中に鉢を並べたり、直接用土を入れて植え込んで鑑賞することもできます。

→湿潤なテラリウムとの相性も良く、テラリウムのアクセントとしても使うことができます。


◆◆置き場所の環境について◆◆

【 温度 】
25℃程度が成長に最適です。

→温帯性の仲間は屋外で冬場の低温にも耐えますがやや水を切った状態で乾いた冬風に当てないように管理します。

→熱帯性の仲間においては高地性のものが多く、日本の過酷な夏の暑さに耐えられないものもあります。



【 湿度 】
70%程度が理想とされます。

→70%以上の高湿度の場合、高温下で空気が淀むと蒸れて枯れる(根元から溶ける)ことがありますので注意が必要です。

→冬場は概して湿度が低く、夏場のエアコン使用は湿度を下げますので注意が必要です。

→しっかりと根付いた草体は低湿度環境下でも問題ありません。



【 光 】
→直射日光、西日は厳禁です 屋外育成の場合は冬季50%、夏季は80%程度遮光します。

→60cm水槽で20W〜40Wのライトを使用します。

→葉が小さくなったり、茎や葉が徒長(間延び)し始めると光量不足の可能性があります。

→葉の色が全体的に薄明るくなる場合は光が強すぎる可能性があります。



【 風通し 】
→扇風機のような絶え間ない一方通行の風は好みませんが、特に夏季は緩やかな風通しの良い環境を好みます。

→密閉環境は高温になるほど蒸れやすくなり注意が必要です、完全密閉は避け通気性を確保します。

→自生地ではフカフカとした枯葉や新しい腐葉土があるところで這うように生えており、土壌は通気性の高い環境であるといえます。


◆◆肥料について◆◆

ジュエルオーキッドの仲間は主に貧栄養環境に自生し、その環境の中で効率良く栄養を取れるよう根にラン菌とよばれる菌類と共生しています。 肥料を与えずともラン菌の活動によって用土より必要な養分が根に与えられるので無肥料でも育ちます。

肥料を与える場合は緩効性固形肥料を極少量、鉢の隅に置いたり、液肥を規定量の倍にさらに薄め霧吹き等で潅水時に用土へ与えます。 肥料の与えすぎはコケの発生を招き、用土の通気性が損なわれることもあるため注意が必要です。



◆◆潅水(水遣り)について◆◆

用土の表面が乾いてきた時点で行います。日本の気候で春、秋の成長期は朝にたっぷりと与え、過酷な夏は少し控えめに夕方〜夜間に与えます。水槽栽培等で湿度を維持できている環境では霧吹きでの水遣りで対応できます。 ジュエルオーキッドの根は水分過多でも腐りにくい性質をもっていますが過度な潅水は控えましょう。また成長点(新しい葉が出るところ)に水が溜まるのを好まない傾向がありますので水遣りは草体にかからないようにおこなうのが良いでしょう。

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