言わずもがな銘トカゲ バルバータスカメレオンモドキ


 

バルバータスカメレオンモドキ。まるで古代生物のような顔つきです。



バルバータスカメレオンモドキとは?

バルバータスカメレオンモドキ Chameleolis barbatus とは、カリブ海のキューバ共和国に生息する30cmほどのイグアナ科(もしくはアノール科)、 カメレオンモドキ属に分類される奇妙なトカゲで、別名をフトヒゲカメレオンモドキ、セイブカメレオンモドキとも呼ばれています。

カメレオンモドキ属には5種類が記載されており、全てキューバ共和国の固有種ですが、その奇抜な形状のためか、分類に関しては近年でも研究者によって様々な意見があるようです。

カメレオンモドキの仲間は、大きな頭に寸詰まった体をしており、尾は頭胴部よりも短くなっています。手足は短く、ヤモリほどではありませんが趾下薄板(しかはくばん)のようなものがあり、先端には鋭い爪も持っています。そして眼球は左右別々に動かすことが可能で、 色彩も気分や環境に合わせて灰白色から褐色まで変化させることができます。鱗も独特で、丸いタイル状の物が不規則に並んでいます。なお、形状は雄雌共によく似ていますが、雄の方がやや大きくなるようです。

ほぼ完全な樹上性で、主に森林に生息していますが、山頂部から低地のフルーツ畑やコーヒー農園、都市部などでも発見されることがあるそうです。野生下では不活発らしく、1日の60%以上を同じ場所で動かずに休んでいたという観察記録もあります。 食性は肉食中心の雑食で、野生下では特にカタツムリを好んで補食する事が知られています。

 

バルバータスカメレオンモドキ。実に奇抜なトカゲです。

バルバータスカメレオンモドキ。骨張った、大きな頭部をもっています。

バルバータスカメレオンモドキの背面。
丸いタイルのような鱗が不規則に並んでいます。

バルバータスカメレオンモドキの前脚。
ヤモリとイグアナの中間的な指です。

バルバータスカメレオンモドキの尾。正中線上に突起が並んでいます。



バルバータスカメレオンモドキの飼育方法

飼育ケージ

飼育ケージは高さがあり、蒸れに弱いので通気性の良いものを選びましょう。樹上性なので登れる環境は必須です。 カメレオンモドキが全身を任せられる、太めの枝などでレイアウトします。また、空中湿度を保つため、生きた観葉植物などを設置すると良いでしょう。


幼体の飼育ケージ例。成体はより高さのあるケージが良いでしょう。
生きた植物はシェルターにもなります。

枝の上で休むバルバータスカメレオンモドキ。

温度&湿度

エキゾチックな外見をしていますが、あまり高温には強くないので、26℃〜28℃がよいでしょう。夏場の高温には注意が必要です。


生きた観葉植物を入れると、
空中湿度を保ちやすくなり、トカゲも生き生きとします。

照明

バルバータスカメレオンモドキは、あまり強い光は好まないので、爬虫類専用の蛍光灯タイプのものをメインに使用します。


バルバータスカメレオンモドキ。あまり強い光は好まないようです。

エサ&水

エサにはコオロギやシルクワームなどの昆虫類を与えますが、カメレオンモドキは動きがおっとりしているので、コオロギは後脚を取り除くか、 ピンセットで直接与えるようにしましょう。なお、食べ残されたコオロギなどはカメレオンモドキに咬み付く事があるので、ケージ内に残さないようにしましょう。

本来の食性であるカタツムリを与えることもできます。その場合は、カタツムリに野菜などを与え、数日間飼育してから(体内の糞を排泄させてから) 与えるようにします。カタツムリを豪快に殻ごとかみ砕く姿は、一見の価値ありです。

慣れた個体はレオパゲルなどの人工飼料も食べるようになります。また、イチゴや昆虫ゼリーなど甘い物も好物です。バラエティ豊かに、様々なものを与えると良いでしょう。

カメレオンモドキは脱水に弱いので、飲み水は非常に重要です。水場は常設しますが、念のため飲み水は霧吹きで与えましょう。というのも、カメレオンモドキに限らず、 樹上性のトカゲは植物などについた水滴を舐めるように飲むものが多く、水場から直接飲むのが苦手な個体も多いからです。朝と夕の2回はしっかりと霧吹きをするようにしましょう。 なお、個体によっては水場の中でばかり糞をする個体がいます。水入れは常に清潔にしましょう。


観葉植物の葉に付いた水を舐めるようにして水分を摂取します。

カメレオンモドキの性質

カメレオンモドキの仲間は、動きがおっとりしていて扱いやすいトカゲです。しかしながら、神経質な一面もあり、人間が見ていると餌を食べなかったり、 物音が聞こえたら餌を食べるのを中断してしまったりする場合があります。また、テリトリー意識が強く、雄同士では激しく争うこともあります。

性質はおとなしい個体が多いですが、希に気性の荒い個体もいて、人間が咬まれてもそれなりに痛いです(ちょっと血が滲むくらいですが)。 なるべく人間の視線よりも高い位置にケージを設置し、ハンドリングなどは行わない方がよいでしょう。


暗色に変化したバルバータスカメレオンモドキ。
気分や環境によって体色が変化します。

単独飼育、もしくはペア飼育

先述したようにカメレオンモドキの仲間は、雄同士は激しく争う場合があります。同じケージでなくても、ガラス越しに別の雄が見えるだけで、ストレスがかかってしまいます。単独飼育、もしくはペアでの飼育を行いましょう。

雌雄判別は容易で、総排泄腔の下部に大きな丸い鱗が2枚並んでいるのが雄です。


バルバータスカメレオンモドキの雄。
総排泄腔の下に丸い大きな鱗が2つ並んでいます。

カメレオンモドキ…スターたる素質を備えた銘トカゲです

カメレオンモドキの仲間が初めて日本に輸入されたのは1990年代でした。展示目的で水族館に貸与されたのが初来日だったと思います。その後、しばらくしてペットとしても流通するようになりました。その奇抜な姿に多くの愛好家が衝撃を受けました。 『カメレオン』の名を持つトカゲは他にも複数存在していましたが(例:カメレオンモリドラゴン。インドネシアのアガマ科のトカゲ)、本種はそれらの中でも決定的なものとして受け止められました。しかしながら、原産国が野生動物の保護に厳しい キューバ共和国ということもあり、その後の流通は不透明な状況でしたが、愛好家の努力により2010年頃には欧米で繁殖された個体が少数ながらもコンスタントに流通するようになりました。近年では国内でも繁殖例が聞かれるほどです。

カメレオンモドキはルックス、飼育難易度、生態…どこを見ても欠点が見つからない優秀なトカゲです。現在は欧米からの繁殖個体が流通のメインですが、今後は日本国内でも繁殖例があちこちで聞かれるようになる…そう信じたい銘トカゲです。


バルバータスカメレオンモドキ。どこから見ても素晴らしいトカゲです。

 


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