珍蛇界の重鎮 ミツウロコヘビ


 

ミツウロコヘビ。東南アジアに生息する奇妙なヘビです。



ミツウロコヘビとは?

ミツウロコヘビ Xenodermus javanicus とは、ビルマ、タイ、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島、ジャワ島などに生息するヘビで、『ドラゴンスネーク』という商品名もあります。とにかく奇妙な形状をしており、 学名の “Xenoderma” とは“不思議な皮膚”という意味です(“Javanicus” は基準産地であるジャワ島に由来しています)。

ミツウロコヘビはナミヘビ科、ミツウロコヘビ属に分類されており、一種のみでミツウロコヘビ属を構成しています。日本にも生息するタカチホヘビなどに近い仲間という説もありますが、他のナミヘビ科との類縁関係もはっきりしておらず、 分類的、もしくは系統的な遺存種、いわゆる『生きた化石』の一つと考えられています(実は、ボルネオ島にミツウロコヘビに関係がありそうな不思議なヘビが一種いるのですが…また別の機会に紹介できればと思います)。

ミツウロコヘビは全長60pほどの細長いヘビで、雌の方がやや大きくなります(10cm〜20cm程度)。頭部は大きく角張っており、胴部は細長く、尾は非常に長い体型をしています。色は艶のない黒灰色で、背面には和名の由来でもある大きな鱗が 4列並んでいますが、それ以外は丸みを帯びた小さな鱗で覆われています。

多湿でやや涼しい環境を好むらしく、主に標高500m〜1000mまでの山地に生息しており、渓流近くの落ち葉や倒木の下で見つかることが多いそうですが、夜間に果樹園や水田、用水路でも発見例があるそうです。

生態に関しては不明な部分が多く、半水生とも半地中生とも(もしくはその両方とも)いわれています。食性なども詳しい事はわかっていませんが、カエルを捕食していると考えられています。 繁殖形態は卵生で、野生下では10月から2月の雨季に2個〜4個の卵を産卵し、およそ60日で孵化します。

一般的なヘビの餌であるマウスを食べないヘビ(もしくは特殊な餌しか食べないヘビ)に対して『珍蛇』もしくは『変態蛇』という呼称がありますが、ミツウロコヘビこそは珍蛇界の重鎮といえる存在でしょう。

 

ミツウロコヘビの頭部。つぶらな瞳がかわいいです。

上から見ると、頭部が大きいのがよく分かります。

ミツウロコヘビの背面。正中線上に2列、
そして左右に1列づつ、特徴的な鱗が並びます。

ミツウロコヘビの胴部。細かい鱗が並んでいます。

ミツウロコヘビの腹部。白と黒の美しいグラデーションになっています。

ミツウロコヘビ。ひょろりと細長い体型をしています。
 



飼育方法

飼育ケージ

飼育データはほとんどありませんので、筆者の少ない経験からわかる範囲で説明します。まずケージですが、少なくとも60cm×30cm×30cmほどのスペースがあった方がよいと思います。 こういう奇妙なヘビを飼育する時は、大きめのケージに様々な環境を設置し、飼育初期はヘビ自身に適した環境を選ばせた方がよいでしょう。


飼育環境

ケージの1/2に水苔などを厚めに敷いて多湿な環境を作り、その上にシェルター(隠れ家)を設置します。そして、残りの1/2には赤玉土などを敷いて乾燥した環境を作り、その上にもシェルターを設置します。 そして、両サイドに水場を設置し、中央に生きた観賞植物を設置します。植物は空中湿度を保つのに役立ちます。

環境が混じり合わないよう、底面にあらかじめトレイなどを設置してもよいでしょう。多湿なエリアと乾燥したエリア、そして水場がきっちりと別れている方がよいと思います。 ミツウロコヘビは見るからに乾燥に弱そうな姿をしていますが、こういうタイプは同時に皮膚も弱い場合が多く、あまりジメジメしすぎると皮膚病になる恐れがあるからです。


温度&湿度

あまり高温に強くないと思われますので、日中は25℃〜28℃、夜間は22℃前後に設定します。湿度に関しては、蒸れなければ特に問題なさそうです。 ただ、空気の流れに敏感な一面があるので、空調器具の風などが直接当たらないように注意しましょう。


照明

ほぼ完全な夜行性なので特に必要ありませんが、日中との区別をつけるため、蛍光灯タイプの照明を午前中に照射するとよいでしょう。


管理

飲み水を毎日替える、糞をしたら取り除く、多湿なエリアに水分を補給する…といった一般的な管理を行いますが、 それ以外はなるべく刺激しないように見守りましょう。なお、夜間に餌を与える前に霧吹きをかけて刺激してやると、活性が上がる場合があります。


性質

ミツウロコヘビは非常におとなしいヘビで、咬み付いてくるようなことはありません。動きもなんだかぎこちなくて、ヘビっぽくありません。はっきり言って、 何を考えているのか(何も考えていないようにも見えますが)よくわかりません。ただ、給餌の際などには獲物に静かに近づき、素早く食らいつくという意外な瞬発力を観察できます。


餌&水

餌は本種のような珍蛇を飼育する際における最大の難所であり、楽しみであり、謎でもあります。

ミツウロコヘビは、飼育下ではアジアウキガエル、ヤマアカガエルの幼体、ダルマガエルの幼体、金魚、グッピー、オタマジャクシ、ミミズなどを食べた記録があるそうですが、餌付けやすいのはカエルでしょう。 アジアウキガエルなどは大型魚の餌として販売されている場合もあり、個体によっては解凍したものや、アカガエルの脚などもピンセットから食べることがあります。しかしながら、北米原産のウシガエルや毒性の強いヒキガエルなどは使用できません(オタマジャクシも不可です)。

魚類に関しては、水入れの水量を少なくして泳がしておくか、ヘビの近くにそっと置いてやると、食べることがあります。なお、給餌は夜間に照明を消して行いますが、慣れれば日中でも食べるようになります。


ミツウロコヘビ。動きもカクカクしていて、ヘビっぽくありません。
 



ミツウロコヘビ…挑戦者求む!

ミツウロコヘビはその奇妙な姿から、一部の愛好家には古くから知られた存在ではありましたが、その実態は謎に包まれていました。まさに未確認生物的な存在だったのです。洋書に掲載されていた写真を穴が開くほど見つめ、「背中の鱗はなんだ?」「地中に潜るって本当だろうか?」などと答えの出ない事を考え続け、我慢が出来なくなくなり、 ついには本種を求めてボルネオやマレーシアに赴いた挑戦者たちもいました(筆者もその一人です)。初めてミツウロコヘビに触った時、その奇妙な触り心地と、ヘビとは思えぬ不思議な動きに驚き「もしかして、毒があるのでは?」と思い、自分の指を咬ませようとしたのを覚えています。今では考えられない愚行ですが、その時は本気でした。

そんなミツウロコヘビが日本に初めて輸入されたのは2007年でした。専門誌に大きく取り上げられ、その奇抜な姿は愛好家以外にも大きな衝撃を与えたことでしょう。その後も少数ながらも流通は続きましたが、現在に至るまで飼育方法は確立されていません。特殊化した生物は特殊な生態を持ち、飼育難易度の高さはその特殊性に比例する場合が多いです。 ミツウロコヘビはある意味、その頂点に存在しているといえます。安易な飼育を勧めることはできませんが、飼育研究により新たな生態が解明されるかもしれません。


飼育方法はいまだ手探りの状況です。
頭と財布の中身が空っぽになるかもしれませんが・・・挑戦者求む!。
 


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