退かぬ!媚びぬ!省みぬ! タイリクシュウダ


 

生まれて間もないタイリクシュウダの幼蛇。
赤ちゃんなのに目つきが悪いですね。



タイリクシュウダとは?

タイリクシュウダ Elaphe carinata とは、中国南部から、ベトナム、日本(尖閣諸島)などに分布する全長160〜250pほどの大型のナミヘビで、海外では“King Rat Snake”と呼ばれています。 日本の与那国島にもヨナグニシュウダ E.c.yonaguniensis という固有亜種がいますが、今回はタイリクシュウダに焦点を当てて紹介させていただきたいと思います。

タイリクシュウダは漢字で“臭蛇”と書きますが、これは本種が危険を感じると臭いのある分泌物を総排泄孔から出すことに由来しています。しかしながら中国では“王錦蛇”とも呼ばれています。 こちらには諸説あり、本種が他のナミヘビに比べても大型であるからという説や、本種が毒蛇を含むあらゆるヘビ類を捕食するからという説、または成長した本種の頭部に滲む黒い斑紋が『王』の文字に見えるから、という説があります。

タイリクシュウダは平地から低山地、森林、水辺、農耕地、人家近くまで様々な環境に生息しており、樹上でも活動することがあります。食性の幅は広く、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、時には同種まで、様々な脊椎動物を捕食します。



飼育方法

飼育環境&エサについて

大型種なので大きめのケージで飼育しましょう。狭いケージではストレスで状態を崩してしまう事があります。体が浸かれるぐらいの水入れも常設します。

床材はバークチップからパインチップなどが使用できますが、大型でよく汚すので、新聞紙などの方が管理は楽だと思います。 若干神経質な一面があるので、ウェットシェルターなどの隠れ家は必須です。登り木などは特に必要ありません。なお、低温だと状態を崩しやすいので、飼育温度は27℃前後が良いでしょう。

CB個体(繁殖個体)も時折流通しますが、WC個体(野生採集個体)の流通が主流です。どちらもほとんどの個体が問題無くマウスに餌付きますが、輸入されたばかりのWC個体は消化力が落ちている場合があるので、 飼育開始当初はピンクマウスやピンクラットなどをこまめに与え、状態が安定したら(2ヶ月後を目安に)ホッパーやアダルトマウスを与えるとよいでしょう。 私はそれらを与える際にも、脊椎部にニッパーなどで切れ目を入れ、消化を促すようにしています。また、定期的にマウスの体内に爬虫類専用の栄養剤を詰めた水溶性カプセルを埋め込むと、 状態がより安定し、体表に艶が出て非常に鮮やかになります。手をかければかけるほど美しくなるので、仕上げ甲斐のあるヘビだと言えるでしょう。 


全長80pほどのタイリクシュウダ。色彩は個体差が激しく、
もっと黒いものや茶色いものもいます。大きくなっても目つきが怖いですね。
 


ハンドリングはやめておきましょう

稀に幼蛇から飼い込まれ、人慣れした個体も見られますが、基本的には気性の荒い種類です。飼育しているうちに大人しくはなりますが、やはりハンドリングは勧められません。観賞用として飼育した方がヘビも人間も幸せだと思います。 なお、シュウダは臭いを出すので“臭蛇”と紹介しましたが、私が過去15年にわたり100匹以上のシュウダを扱ったなかで、耐えられないほどの臭気を感じたのは1度だけです。個人的にはアオダイショウやマダラヘビなどと大差はないように感じます。 また、飼育しているうちに匂いも出さなくなる個体がほとんどです。


口を大きく開けて威嚇するタイリクシュウダ。毒などはありませんが、
咬まれるとそれなりに痛いです。しかしながら、この気性の荒さも本種の魅力の一つです。
 


タイリクシュウダのカラーバリエーション

タイリクシュウダにはいくつかのカラーバリエーションが見られます。代表的なものを以下に紹介します。


“Stripe”。体の模様が縦線状になっています。

“Banded”。体の模様が横縞になっています。

“Albino”、先天的にメラニン色素が欠乏している個体です。

“Albino”の頭部。白ウサギのように赤い眼をしています。

“Melanistic”黒化個体です。艶のあるブラックがかっこいいですね。

“Leucistic”、アルビノとは異なる色彩変異です。

上記と同じ“Leucistic”の頭部です。
白くなると、なんだか目つきも優しくなったような気がしますね。
 


謎のユンナンシュウダ

昔から愛好家の間では、中国の雲南省にはシュウダの亜種が存在すると噂されていました。その名をユンナンシュウダといい、英名では“Highland King Rat Snake”と呼ばれ、 E.c.depenensis という学名も与えられていますが、発見数が極めて少なく、 本当に存在するのかどうか、はっきりしていませんでした。現在でも研究者によっては本亜種の存在を認めていない場合もあるそうです。

ユンナンシュウダらしきヘビを私が初めて見たのは2002年頃で、当時はタイリクシュウダの“White Tiger”という商品名でした。私はその個体になんだか違和感を覚え(頭部の模様や形態などに)詳しく調べたところ、 その個体が雲南省付近で採集された事がわかり、もしかしたら、ユンナンシュウダではないだろうか?と思うようになり、中国の愛好家に相談しましたが、はっきりとした結論を出すことはできませんでした。

その数年後、またしてもユンナンシュウダらしき個体の採集に成功し、日本へ輸入することができました。中国の愛好家は「これはユンナンシュウダに間違いない」と言っていましたが、 疑り深い私は「幼蛇を何匹か見てから考えよう」と答えました。幼蛇にも特徴的な形質が見られるならば、少なくとも固定された遺伝形質があると思ったからです。

さらに数年後、数匹の幼蛇が捕獲されました。そしてそれらにも特徴的な形質が見られることがわかり、「亜種として認められるかどうかはさておき、おそらくユンナンシュウダと言われている(いた?)ものなのかなぁ」という事になりました。

なお、ユンナンシュウダは通常のタイリクシュウダよりも標高の高い場所で発見される事が多いそうなので、高温に弱いのかと思っていましたが、飼育してみればさほど差が無いように思います。 また、今までユンナンシュウダを16匹ほど扱いましたが、タイリクシュウダよりも扱いやすく、性質が穏やかな個体が多いような印象を受けました。

まだまだわからないことばかりですが、こういったミステリアスな出会いも、この趣味の醍醐味の一つですね。



タイリクシュウダの“White Tiger”として輸入された個体。ユンナンシュウダでしょうか?

“White Tiger”と呼ばれていた個体の頭部。

数年後にユンナンシュウダとして輸入された個体。

ユンナンシュウダの幼蛇とされる個体。
 


不思議な魅力があるヘビです

タイリクシュウダは、飼育そのものは難しくないものの、ハンドリングには向かず、大型になるため、万人受けするタイプではないでしょうが、一部に根強い愛好家が存在します。「タイリクシュウダが大好きだ!」という方は日本でも、 中国でも、アメリカでも出会いましたが、共通して言えるのは皆さん本気というか、真面目というか、個性的というか・・・うまく言えませんが、タイリクシュウダに負けないぐらいインパクトの強い方が多いような気がしました。そんな彼らはとても勤勉で、 タイリクシュウダの事を徹底的に研究しており、缶コーヒー1本で何時間でも話せるぐらいの情報量を持っていました。目つきが悪くて、大きくて、臭くて、ブタ咬みですが(←愛好家にとっては全て褒め言葉です)、一度ハマったらなかなか抜け出せない不思議な魅力がタイリクシュウダにはあるようです。

どうでしょう?…人間には媚びない猛獣のような気高いヘビを、一度は飼ってみたいと思いませんか?


タイリクシュウダ。まさに王蛇の貫録ですね。
 


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