ブリードへの基本理念


インペリアルゼブラプレコ
個体数の減少によりブラジルから輸出が
禁止されたインペリアルゼブラプレコ

急速に発展し続ける人間社会。
その中で、私たちは様々な恩恵を受けています。

一方、利便性や生産性を追い求めるあまり、知らず知らずのうちに他の生き物を犠牲にしてしまっていることもまた事実です。  

近年、世界的に環境問題への関心が高まる中、様々な生き物を保護する試みが盛んに行われ始めており、観賞魚業界もその例外ではありません。 例えば、一部の魚種は絶滅の危惧が唱えられ、輸出を規制する国々も出ており、その傾向は、今後一層激しくなるものと思われます。

当社では、これらの問題を考慮し、新しい時代に対応するため、本格的なブリーディング部門を創設いたしました。 この試みは、希少生物や自然環境の保護、良い状態の生き物の安定的な供給などを目的としています。  

さらに、ブリードの過程で得られる数多くの知見は、飼料や飼育用品といった商品開発へフィードバックされ、世界中の観賞魚愛好家の皆さまに、より良い観賞魚飼育を提案することに繋げられるよう、未だ知られていない学術的な情報としても蓄積されています。こうすることで、観賞魚業界のみならず、学問分野への貢献も目指しています。  

このような基本理念の下、私たち神畑養魚株式会社は、ブリードを通じて、観賞魚業界および社会への貢献に取り組んでいます。





神畑ブリーディング部門 〜これまでの挑戦と実績〜


神畑ブリードの生き物

神畑ブリードの生き物(抜粋)



神畑ブリーディング部門ではこれまでに、実に約100種におよぶ観賞魚・両生・爬虫類のブリードに成功してきました。 近年では、水草のブリードにも力を入れており、水草まで含めると、『神畑ブリード』の生き物は200種を超えます。

観賞魚から水草に至るまで広範なブリードに挑戦し、また成功の実績をあげている機関は世界的に見ても少なく、 今までに得た成功の実績は、弛まぬ挑戦と努力の賜物だと自負しております。
このような神畑ブリードの生き物は、容姿・状態などの面において取引先の皆様から高い評価を頂くと同時に、 観賞魚業界を活性化させていくものとして、多くの観賞魚ファンの皆様から期待を寄せていただいています。

特に2007年、ポリプテルス・ビキール・ビキールの繁殖に世界で初めて成功した実績は、
古代魚ファンを中心として日本の観賞魚業界のビッグニュースとなっただけでなく、海外の観賞魚愛好家からも注目され、 今なお非常に高い評価を頂いています。



ポリプテルスビキールビキールの親魚、孵化仔魚、証明書

世界初の成功事例となったポリプテルス ビキール ビキール (Polypterus bichir bichir)のブリード


近年では、2012年鹿児島県南九州市にて南九州養殖センターを開設しました。 豊富な天然海水、温暖な気候などの恵まれた環境の下、日夜ブリードに勤しんでいます。

こちらでは、主に海水魚のブリードに力を入れており、人気種であるがゆえに保護が叫ばれているカクレクマノミを始め、タツノオトシゴ・クラゲなどのブリードと安定供給に成功しています。

この背景には、ブリードにとって生命線ともいえる親魚の栄養状態や生物餌料への意識強化があります。 栄養バランスを考えた飼料の給餌は、産卵の誘起や卵質の向上につながります。

また、水産養殖で用いられる技術を応用し、初期餌料として不可欠なワムシやブラインシュリンプなど生物餌料の栄養強化にも取り組んでいます。


KAMIHATA AQUA NETWORKサイト掲載の「活きエサ・生物餌料」ページへ★



さらに、先に述べた保護の対象となる、または将来的に対象とされるであろう希少生物の繁殖にも積極的に取り組んでいます。

実績としてはまだまだ不十分ですが、繁殖に向けた飼育に取り組みながら、小さな情報や発見も見逃さぬよう、日々取り組んでいます。 これらさまざまな取り組みによって得られた知見が、観賞魚愛好家の皆さまの飼育に役立ち、 今後の観賞魚業界の活性化と、社会への貢献に繋がることを信じ、私たちはこれからもブリードに挑戦し続けます。


南九州養殖センター外観、神畑ブリードのカクレクマノミ、カリビアンシーホースなど南九州養殖センターと、そこで生まれたブリードの海水魚




神畑ブリーディング部門が拓き・挑む、ブリードの新領域


これらに加え、新たな領域の開拓と挑戦を止めることはありません。
ブリードを通じて人々と生き物とを結ぶこと、これこそ神畑ブリーディング部門が拓き、そして挑むべき新領域だと考えています。



ブリードでしか手に入らない普通種!?

当社では、安定的な供給もあり、また手頃な価格で取引きされている生き物のブリードにも力を入れています。 例えば、当社が世界で初めて商業ブリードに成功したミドリフグや、バンブルビーフィッシュなどがそれにあたります。

これをご覧の皆さまの中には、『こんな普通種、殖やしても・・・』と思われる方もいらっしゃると思います。 それはひとつの答えではあります。

しかしながら、そんな普通種といわれる生き物であっても、活きエサや冷凍エサへの嗜好が強く、なかなか人工飼料を食べようとしない場合もあります。

では、通常の流通では手に入らないようなサイズで、すでに人工飼料に馴れていたらどうでしょうか。 私たちは、小さなサイズから飼育しやすいことも、飼い主と生き物の関係をより早く深める手助けになると考えています。



『ブリード』 から 『殖やす楽しみ』 へ

ブリードをおこなっていると、様々な気付きや驚き、感動を体験することが多々あります。

『この魚にこんな生態があったのか!』 
『よくここまで育ってくれた!』 など枚挙に暇がありません。

このような驚きや感動を、より多くの人たちと共有することができたら・・・という考えから至ったのが、『殖やす楽しみ』を体験してもらうという新領域です。

ブリードという概念を、『殖やす楽しみ』として一般化することで、誰もが生き物の面白さや神秘などに親しみをもって接することが出来るような環境をつくること。
これによって、人々と生き物の距離を、より縮めることが出来るのではないかと考えています。


私たちは、このような視点からもブリードに取り組んでいるのです。




来る新たな時代における神畑ブリーディング部門の役割と発展



今後100年において、地球温暖化・大気汚染・森林の減少・砂漠化など環境問題の進行に伴い、 地球環境は生物にとって、より厳しいものとなることが予想されています。 このような事象に加え、人間社会における嗜好や価値観も多様化の一途を辿ると考えられます。

同時に人間社会と観賞魚の関係は、さらに希薄化することが懸念されています。


このような時流の中で、私たち神畑養魚株式会社は、観賞魚業界を衰退させること無く、発展させ続けていくべきであると感じており、 弊社ブリーディング部門が、ここに寄与するものは大きく、ブリード無くしての達成は困難であると考えています。  


目指すところは、全ての観賞魚のブリードを成功させること、さらにはあらゆる魚の種苗生産など、真の意味での種の保存です。 また、先に述べたようなブリードが拓く新領域を、社会に広く浸透させることも重要だと考えています。


これらの思いがかたちになり、これからも、観賞魚を始めとした多くの生き物と皆様が共に過ごす時間を充実させることができるよう、 私たち神畑養魚株式会社は、これからもチャレンジ精神を以て、人と生き物が共に暮らす環境をトータルに創造・提案してまいります。




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