水草レイアウト水槽における ろ過と換水の役割

水草レイアウト水槽における ろ過と換水の役割


水草は魚の排泄物や残り餌から発生するアンモニア、硝酸、リン酸を養分として成長できるといわれているため、ろ過や換水は必要ないのではと感じる方も多いと思います。 しかし、実際のところはろ過も換水も多くの水草にとって大切な要素です。ろ過と換水によって、どのような効果・作用があるのでしょうか。




目次



1.生物ろ過と換水によって、水中の有機物と過剰な栄養塩を除く


1-1.水草の成長を妨げる要因



水草の成長を妨げる要因として不適切なpH・硬度やケイ酸といった無機の要素がよく知られていますが、有機物と栄養塩の影響も実は非常に大きいです。 有機物はたんぱく質、アミノ酸、核酸、糖質、脂質などが該当し、栄養塩とは窒素(アンモニア、硝酸、亜硝酸)、リン(リン酸)、カリウム、そのほか微量元素が該当します。 これらが過剰にある水槽では水草の成長が妨げられるため、生物ろ過と換水によって、除去・分解することが大切です。次項より、有機物と栄養塩に分けて、そのメカニズムについて記載していきます。



1-2.有機物をろ過で分解、換水で除去

有機物が水草の成長をどのように妨げているのか、それを説明する資料はほとんどありません。長年にわたる当社の試験水槽を測定した結果、水草の調子が悪い水槽のCOD(=科学的酸素要求量。 水中有機物濃度の指標)は8mg/L以上の場合が多く、逆に調子の良い水槽ではほぼ全て2mg/L以下という傾向でした。また調子の良い水草水槽に有機物としてクエン酸や酢酸、砂糖を過剰気味に投入する試験を行ったことがありますが、 その時は水草の成長が停止しました。つまり、有機物が少ない方が水草の調子が良いことが分かります。



水草は陸上植物と違い、葉表面の孔から水中の二酸化炭素や栄養分を吸収しています。水中の有機物が多いと、この葉表面の孔が有機物を餌とする細菌や藻類によって塞がれて、成長が阻害されるのではないかと考えています。 事実、自然界で水草が水中葉を展開している場所は、有機物の少ない綺麗な水圏です。



この有機物の汚れは、ろ過装置のろ材に繁殖したろ過細菌(生物ろ過)によっても分解されます。しかし新規に立ち上げた水槽、トリミング直後では分解が追いつかない場合が多いようです。 そのため、換水によって過剰な有機物を強制的に除去することは非常に効果的です。



1-2-1.有機物を効率良く減らすためのろ過の管理

ろ過装置の有機物分解性能を発揮させるためには、下記をおこなうことを推奨します。


  • @ 有機物分解細菌がろ材に定着するまでは1ヶ月程度かかるため、その間の換水頻度を上げる。具体的には、週3〜4回程度、なるべく多く9割程度の水量を目安に換水。
  • A 同期間、有機物を吸着する活性炭をろ過槽などに追加して生物ろ過を補う。
  • B ろ材に汚れが溜まっている場合は、優しく洗う(※)

ろ材に有機物の汚れが溜まりすぎると、分解菌はろ材周辺に溜まった有機物の分解に注力し、飼育水に含まれる有機物の分解が進みません。つまりキャパシティーオーバーになっている状況です。
その場合は一旦ろ材を洗浄し、物理的に有機物を除去します。このとき、ろ材には有機物分解菌が多く定着しているため、飼育水を使って洗浄し(注:水道水で洗うと菌を殺してしまう)、強く洗いすぎない(注:菌を洗い流さない)よう気を付けます。 ろ材の汚れ方次第ですが、1〜2ヶ月に一回はろ材を洗浄すると良いでしょう。



1-3.過剰な栄養塩を換水で除去

窒素やリンといった栄養塩は水草の成長に不可欠な必須要素です。ところが、これらが水中に過剰にあると水草が吸収しきれなくなり、コケ・藻類の栄養源に回ってしまいます。このコケ・藻類が水草葉に付着すると前述と同じ理由で水草の成長を妨げます。

水中の栄養塩が過剰になりやすい状況として、水槽の新規立ちあげ時(特に栄養系ソイル使用時)、カミハタOKOSHIやトロピカ カプセル栄養剤を施用直後、魚を多く入れて給餌の多いとき、トリミング直後・・・・などがあります。このような場合は換水をおこない、余分な栄養塩を強制的に 取り除くと良いでしょう。他には成長の速い水草を植えたり、吸着剤を使用したりする方法もありますが、換水が一番確実かつ早いです。



水草水槽マニュアル
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