水草水槽と外部式フィルターの相性 〜エーハイムアンバサダーが語る〜

水草水槽と外部式フィルターの相性 〜エーハイムアンバサダーが語る〜



水草水槽にはなぜ外部式フィルターが良いのか。外部式フィルターは他のフィルターと比較して少し高価だが、そのメリットはどの程度あるのか。 推奨されるろ材とその使い方は?このようなユーザー様のお悩みに、“エーハイムアンバサダー志藤範行氏”が独自の視点で解説いたします。




目次



1.外部式フィルターの特徴

外部式フィルターの特徴として様々なメリットとデメリットがあります。


1-1.外部式フィルターのメリット

外部式フィルターのメリットをいくつか上げると、




  • ・二酸化炭素が逃げにくい
  • ・ろ材がたっぷり収容できる
       ー複数のろ材を創意工夫を凝らし
        カスタマイズできる
       ーウールやスポンジ以外は長期間使用可能で
        ランニングコストを低減できる
  • ・本体の耐久性が高く長期使用が可能
  • ・静音性が高い
  • ・2本の給排水ホースの自由度が高い
  • ・パーツが豊富
  • ・ラインナップが豊富



こんな感じでメリットが少なくありません。上記に補足させていただくと、関連パーツが豊富な点は趣味心をくすぐります。これらを用いて自作する工夫の余地や楽しみがあります。 また、一口に「外部式フィルター」といっても、ポンプ性能差で水流の強弱や、ろ材の容積などのサイズ差などもあり、市販された多くの製品の中から自分に合う製品を選択できることもメリットのひとつです。



1-2.外部式フィルターのデメリット

同時に上げられるデメリットとしては、



  • ・若干のイニシャルコスト(≒初期投資)高が否めない
  • ・慣れないと掃除の時に少し手間取る
  • ・一定の本体容積があるので、その場所をとる
  • ・閉鎖ろ過形式であること


このぐらいでしょうか。ご参考までに「閉鎖ろ過形式」についてですが、いわゆるドライろ過形式と比較すると、外部式フィルター内は密閉形式なので大気にさらされておらず、ろ材に対しての酸素供給に不利な面が少しあります。 水草水槽などでは考慮するレベルではありませんが、魚主体の多数飼いの水槽の時などは少し気になることもあります。とは言え、一般的な水草水槽内での飼育魚数を想定すると、その点に関しては気にする必要はありません。


1-3.メリットとデメリットのバランス

置き場所がないときはフィルターの選択肢から外さざるを得ませんが、置き場所を確保できるようなときは、メリットがデメリットをはるかに上回ります。したがって大事な水槽でしっかり水草水槽をやるような場面では、この製品のチョイスが主流となります。


2.水草水槽で外部式フィルターがおススメされる理由

市販されるフィルター製品の種類としては、外掛けフィルター・水中フィルター・底面式フィルター・外部式フィルターなどが挙げられ、それぞれメリット・デメリットがあります。ここでは、水草水槽になぜ外部式フィルターが推奨されるかをご説明します。



2-1.物理的に水草水槽レイアウトの邪魔をしない

外部式フィルターの選択により、給水と排水との2本のホースとパイプのみでろ過の設置が可能となります。水槽内に本体を設置する必要がなくなるため、水槽全体をレイアウトスペースとして活用することができます。 他のスタイルのフィルターに比べ、視覚的に水槽へのアクセス部分を最小限にすることが可能なので、水槽レイアウトの見た目の”すっきり感”は唯一無二です。 背部にフィルターが掛かって見えることも、水槽内部のコーナーにフィルターが見えてしまうことも、分厚い底床からパイプが立ち上がって見えることもありません。 水槽内を思い通りにそして自由にスペース活用でき、何より水草や素材でのレイアウトの自由度が向上します。 他のフィルターより若干コスト高ですが、この趣味が長く続いている愛好家たちは、たいていこの外部式フィルターを使用しているそんな傾向と流れがあります。

両サイドの上部に給排水が見えます





2-2.二酸化炭素が逃げにくい

エアレーションや水面の波立ちなどにより二酸化炭素は水中から逃げやすくなりますが、外部式フィルターは先にふれた密閉式のため、添加している二酸化炭素のロスを最も削減できます。このフィルターが添加効率の妨げにならないことも大きなメリットです。

シャワーパイプの角度によって二酸化炭素濃度が変化した試験動画はこちら







2-3.水草にとって水流は重要

外部式フィルターのポンプは安定したトルクがあり、水槽内にしっかりした流れを作ることが容易になります。添加している二酸化炭素も水槽全体の水草達へ隅々まで供給できます。 受け取った二酸化炭素を光合成により、水草達はしっかりと酸素を放出。魚やフィルター内部のバクテリアたちへも酸素を供給します。これで水槽全体のコンディションがさらに維持・向上することが難なくイメージできます。 外部式フィルターの十分な水流は水槽全体の活性を上げることにも役立ちます。

水草レイアウトにとっていかに水流が重要かを詳細に説明した動画はこちら







2-4.水草水槽にとって必要なろ材量と水流のバランス

水草水槽向きの外部式フィルターは、ろ材を収容するための大きな容積を必要としませんが、しっかりと水流を送ることができるポンプが付随している製品が向いています。 大きい容積であれば、適切な量のろ材に減らして使用することもできますが、容積が小さすぎると、増やす方向での選択肢は限られます。同時に、能力以上に水流は強くすることは叶いませんが、強い水流を弱めることは難しくありません。 フィルター選びは何度も買い換えを避けるためにも水流の確保を念頭に選択するのが賢明です。


3.水草水槽にとっての二酸化炭素の重要性

ご存じの通り、水草は植物ゆえ光合成をしてはじめて繁栄してゆく生物です。二酸化炭素添加の判断は自分自身が今何をやりたいのかどうかで決めるとよいでしょう。 筆者がユーザー様とお話しする際、「水草を育ててみたいときに二酸化炭素を添加しないという行為は、魚の飼育においてエサを与えず飼育していることと同様かもしれませんね」とお伝えしています。 同じアクアリウムでも、どこに主眼を置き、そこに適切なコストをかけるべきかどうかは、魚主導か水草主導かでその判断が異なります。



3-1.水草を主眼にしたい場合は必須

水草を含めた植物の光合成は、光と水と二酸化炭素がその源となります。水槽の中で水草を育ててゆくときは、水中で不足しがちな二酸化炭素の添加は必須であり、かつそれが最低限の条件となります。 ただ、魚飼育をメインとして趣味を楽しむとき、水草は添え物かもしれません。その添え物のために二酸化炭素を添加するか否かの答えは、コスト面から微妙な印象を受けます。ただ、自らの目的が「水草を入れてキレイに楽しみたい」である場合は、やはり必須かつ最低限の条件となります。

3-2.二酸化炭素添加に必要な器具

60cm未満の水槽で水草水槽をやるのであれば、小型カートリッジボンベを準備するのが一般的です。必要量もしくは十分量供給できるのであれば、違うスタイルでもかまいません。 この趣味を長く楽しもうと考えているなら、製品がしっかりしていて安定して添加できる器材のチョイスが賢明です。60cmを含めそれ以上のサイズで水草水槽を楽しむ場合には、通称「ミドボン」と呼ばれる大型のボンベを準備する流れとなります。 ランニングコストがグンと軽減できるので、こちらの選択肢も徐々に見えてきます。

また、先に述べた通り、二酸化炭素を効率的に水草に供給するためには、水流が重要になります。外部式フィルター本体のみで十分な水流を確保できていないときなどは、補助ポンプの活用も視野に入れましょう。

3-3.魚にとっての二酸化炭素と酸欠について

適切な量の二酸化炭素添加であれば、水草水槽内の魚の健康を害することもありません。むしろ二酸化炭素の添加や強い照明の供給により、水草の光合成が活発になり、 より多くの酸素を水中に放出します。水槽内の溶存酸素濃度は増し、逆に魚にとっての環境も向上してゆくようになります。二酸化炭素機材の暴走などでの過剰添加の事故を除けば、水草を収容した水槽での魚にとっては、二酸化炭素の添加はむしろメリットになります。 つまるところ、不慮の事故を未然に防止するためにも二酸化炭素がらみの機材は安心のおけるモノを選んで準備しておきましょう。


4.水草水槽限定で最適なろ材、エーハイムメック

水草水槽の場合は、過剰に魚を入れて水を汚す可能性が低いので、長期的な視点でフィルターを見つめ、
濾(こ)すというよりも目詰まりをいかになくせるかに重きを置いてろ材の選択をするのが良いです。

筆者はエーハイムのYouTube Liveやイベントでことあるごとにお話ししてまいりましたが、おススメは数十年も前から販売され続けている「エーハイムメック」の一択。エーハイムメックは適度に穴が開いた円筒形のろ材です。 水の通水性が高く年単位の放置さえなければ目詰まりすることはありません。








4-1.物理ろ過は限定的に考える

ろ過に関して水が一度通るときにしっかりろ過してしまうのが良いと考えがちです。濾し取り方式は物理ろ過として考え、濾しきったら目詰まりが発生し、水流が低下します。つまりフィルター機能も低下するデメリットがあります。

4-2.バクテリアの重要性

目詰まりによる水流の低下に気づいた時は、フィルターを開けて洗う行為で対処します。しかしながら、その行為はそれまで培ったバクテリアなども流出させてしまい、せっかくの時間の蓄積を不意にしてしまいます。 実はろ過槽をさわらないまま半年を過ぎると、従来以上のコンディションを提供できるほどの能力を得ます。 短いスパンでのろ過洗浄行為により、知らず知らずにその上のステージの良好なコンディションの水槽を見ることなく過ぎてしまっているという少し残念な状況に陥ってしまいます。

より詳細なエーハイムメックの使い方をご紹介した動画はこちら







4-3.エーハイムメック以外のフィルターパッド類やろ材

初期段階では、水中を漂う有機物、粒子、浮遊物やゴミなどが気になるときはフィルターパッド類を短期的に使用するのもありです。しかし、水流の低下などの目詰まりを感じたら、直ぐに取り換えるか除去するのがおススメです。 その他のろ材の選択ではサブストラットプロなども悪くはありませんが、通水性に関しては形状を見るとエーハイムメックの方が有利です。
幸運なことに水草水槽の環境の多くは、投入されるエサの量も少ないため、水は汚れにくいはずです。エーハイムメックのように、水通りがよく、目詰まりしにくいろ材の使用は、フィルターの洗浄時期を極力延ばします。 これは同時にバクテリアを大幅に失う機会を極力少なくしてくれることを意味します。いざ使ってみると、エーハイムメックでしっかり安定してくれる。想定以上に生物ろ過が効いています。




記事執筆:志藤 範行


5.まとめ

ここでは水草水槽に外部式フィルターがすすめられる理由をご紹介しました。外部式フィルターは、水草レイアウトの邪魔にならず、二酸化炭素が逃げにくいというメリットがあります。 その他にも、強い水流を水槽内に作ることができ、水草のみならずバクテリア・魚にとっても有益で、水槽全体のコンディションがあがることが期待されます。また志藤範行氏独自のろ材の選択と使用方法もご紹介させていただきました。













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