初心者からステップアップする水草レイアウトの作り方とコツ 
〜光と影を考えた水槽〜

水草水槽と外部式フィルターの相性 〜エーハイムアンバサダーが語る〜



水草レイアウトを初めてやってみようと思い立っても、どんな素材や水草を買っておけば良いのか、そしてその水草をどう植えたら良いのかを決めることにとても戸惑います。 ネットの旅を続けた末にここへたどり着いたユーザー様の想いに、“エーハイムアンバサダー志藤範行氏”がお応えいたします。少しやってみたけど上手くいかないという方も必見です。




目次



1.水草水槽のレイアウトでは素材(石・流木)が必要

水草レイアウトを始める上で、石や流木などの素材は欠かせません。


1-1.まずは石・流木などの素材を準備する

まず素材を準備します。このとき、水質への影響は考えなくても大丈夫です。知りうる情報の中から、好みの色合いや質感のものをチョイスします。石も流木も、まずは手に取ってみることから始めてみましょう。たいていのアクアリウムショップで売っているモノであれば信頼性が高いです。 なぜなら、”レイアウト用”に売っているものなのですから・・・。



1-2.素材の量の目安 〜レイアウトセットの場合〜

素材を買う際に重要となるのが、水槽の大きさに合った量を選ぶことです。さみしい数ではできることも限られますので、少し余剰かと思うぐらい用意するのが失敗しないためのコツです。”おもちゃ”がなければ遊べませんのである程度しっかり準備しましょう。 カミハタからもレイアウトセットなる石シリーズも種々出ています。こちらは水槽サイズに合わせての箱買いがおススメです。レイアウトセットはコスト的な心配が少ないのに加えて、中身は大小さまざまで汎用性も高いのでこれ一つで足ります。 目安は30cm前後の小型水槽であれば一箱、45cmであれば2箱、60cmであれば3箱をあらかじめ用意しましょう。


気孔石

木化石

黒賢石





1-3.素材を組んでみる

自己流で構いませんので一度水槽の外で並べてみましょう。レイアウト予定の水槽と同サイズの段ボールの上に線を引いてその上で仮組みをしてイメージを膨らませます。 メインとなる大きめの石を思うがままに置き、必要があれば片手でその石を支えます。倒れそうな場合は余った小石を挟み、倒れないように支えると安定しやすいです。最後に残った石を配置して雰囲気を整えましょう。 レイアウトする際のコツとして、ネットで気になったレイアウト画像などを参考にするのもおススメです。以上がレイアウトに取りかかる前段階の作業になります。水槽の外の自分が組んでみたレイアウトを眺め、納得がいけば実際に水槽に入れてみましょう。



2.水草レイアウトに素材(石・流木)の「光と影」を考える

素材の組み方は「光と影」を意識するとステップアップにつながります。


2-1.全ての素材に光を当てることが正解とは限らない

素材の良いところを魅せようと置いてみると、初心者のうちはついついその形がよく分かるように置きがちです。言うなれば、光がよく当たるように素材を後ろに傾けて置いてしまう傾向があります。気に入って買ってきたその形、見せたいがためによく分かるように置くのは当然のことでしょう。 しかし後日、他の人が作った印象的なレイアウトと比べてみると、自分のレイアウトはどうしてものっぺり感が否めません。 自らのレイアウトにそんな違和感を覚えたりどうしてなんでだろうといった”気付き”が実はとても大事になります。できていないことが分かる・いまいちであることに気付くことができる、これは一つの能力であるとも言えます。 ここに気付くことができたのなら次のステップに進んでみましょう。



2-2.影の重要性に気づく

  暗い方に目を惹かれる

試行錯誤しながらレイアウトを組んでいると、だんだんと暗い影になっている部分に目を惹かれ始めていることに気が付きます。全体に光が当たっているよりも、なんだかよく見えるような強い印象を受けます。 良い形を並べておくだけではその印象が弱いことに気付いてしまう瞬間です。これは確実に初心者からステップアップしている自分との出会いの瞬間でもあります。


趣味の範疇ですのでもちろん楽しむことが一番ですが、もしも「いいレイアウトを作ってみたいっ!!」そんな欲が出てきて新たな領域に突入し模索するのもまた趣味の嗜み方の一つと言えます。 しかし新たな領域にあえて進まぬのも選択肢。水草が育ってきたら十分キレイな水草水槽として楽しめますので、今の自身のスタイルでもOKです。




3.具体的な「影」の表現方法

次の壁を模索しようとしている方へ次に意識して頂きたいのは「光と影」。のっぺりレイアウトに気が付いてしまったら、ここからステップアップです。まずは流木でも石でも良いので、「影」から作ってみましょう。



3-1.影は素材(石・流木)を意識的に傾けることで表現できる

やり方は簡単で、素材を手前に傾けるだけです。水草用の照明などの上方からの光は、傾けられた素材の腹へと黒い影を落とします。もっと傾けてみると黒い影の部分がもっと暗い影になりました。素材の傾き加減で「グレーから黒」のグラデーションを演出できます。 垂直気味に立てると明るいグレー、そこから手前に少し傾けてみるとそのグレーが濃くなっていく。自分でもこれで黒の演出、ひいては影の演出ができることが分かりました。 石組みである場合、大中小のサイズ違いで影の作成に臨みます。よく見えるように配置してみた初期のレイアウトの石を大中小で三個チョイス。置いた場所が不等辺三角形の頂点であればなお良いです。それを手前に傾けてみるとたちまち新たな領域に突入することでしょう。

3-2.光は白、影は黒

一方で、光と影の「光」の表現はすでに上手くできています。レイアウト初心者時期にやっていた形がよく見えるように置いたやり方、光が当たるように置くと、その部分は白。光と影の表現は、「白と黒」の表現とも言い換えることができます。一人前のレイアウターになるためのこれが”気付き”の第一歩です。 影の表現・黒の表現、そんな新たな要素をもってして、あらためてレイアウトに臨む。これらは動画の方がわかりやすいかもしれません。エーハイムのレイアウト動画を参考に、これをマスターできるとレイアウトの懐がグンと深くなることでしょう。







3-3.白黒にして「光と影」のバランス確認

なんだかやれる気になってきませんか。自分のレイアウトでも、気になる他の人のレイアウトでもいいので、カラーで見ていたものをモノクロにして眺めてみましょう。白黒の世界にしてみると、先にふれた印象的なレイアウトの骨格のようなモノを垣間見ることができます。 やり方としてはPC上に取り込んだ画像を白黒にしてみるだけで済みます。



ははーん、こりゃいろいろ発見が多いぞ、なんて。こうした新たな意識は、次なるレイアウト製作に活かされます。 モノクロにしてみることでレイアウトの光の強弱を容易に可視化できます。元来持ってる美的センス云々よりもそんなトレーニングを積んだもの勝ち。初心者だからといって諦めないでください。こうして光と影を意識していくだけで、水草レイアウトはたちまち上達することでしょう。


4.レイアウトする際の3つのポイント

これまでは概念的な部分を説明してきましたが、ここからは実施する際のポイントを3つほどお伝えします。


4-1.素材組みの段階で上手くいかなければ何度もやり直す

納得いくまで再チャレンジ。せっかくの自分のレイアウトですから時間をかけて行ってよし。ここで形が決まり、スタートしてしまうとその水槽と何ヶ月も向き合うこととなるので納得いくまでやりましょう。水を張って稼働させた後の骨組みの変更は大なり小なりリスクがありますので、ここでしっかり決めておくのがベストです。







4-2.いったんできたら一晩寝て明日の朝にもう一度チェック

自分の手で作ったレイアウトの形ゆえ、そんな興奮冷め止まぬ作った当日はほどほどよく見えてしまいがちです。一晩寝て目覚め少し冷静な目で昨日作った自分のレイアウトを見つめ直してみましょう。この段階でイケているときはOKです。 次に進む、気になれば手直しを続ける、を納得できるまで繰り返します。ソイルを敷く前の段階であれば数週間続けるのもよいでしょう。ただ、ソイルを敷いた状態での素材いじりはソイルが潰れ、グズグズになってくるので要注意です。ゆえに素材の配置変更はソイルを敷く前に行うのがよいでしょう。 万が一ソイルを敷いてしまったときは、放置をするとソイルが乾燥してしまうのでサランラップなどで覆うのが効果的です。




4-3.ソイルを敷いたらすぐ水草を植え水張りスタート

という感じで、ソイルを敷いたら底床に霧吹きをかけながら植え込みスタートです。ソイルへの植え込みはウエットな方がやりやすいです。水を張ってからだと何度も水の中に手を入れて抜いての繰り返しで水が濁ってしまいます。 もし植えにくいのであれば、水を張ってから植え込むのも良いでしょう。ただしその際、少し濁り気味になりますが、植え込みのあとで換水し水を透明にする努力をすれば問題ありません
幸運なことに水草水槽の環境の多くは、投入されるエサの量も少ないため、水は汚れにくいはずです。エーハイムメックのように水通りがよく、目詰まりしにくいろ材の使用は、フィルターの洗浄時期を極力延ばします。 これは同時にバクテリアを大幅に失う機会を極力少なくしてくれることを意味します。いざ使ってみると、エーハイムメックでしっかり安定してくれる。想定以上に生物ろ過が効いています。




5.水換え

このような流れでまずは初期の換水&水張りまで終了です。二酸化炭素の器材を取付け、フィルターをセットすればひとまず稼働スタート。 その後は換水の試練の連続になります。水草水槽において、基本の換水の量は水槽全体量の「1/2」。実はこれでも少ないため、思い切って「2/3」は換水してしまいましょう。それと、初期にバクテリアなんていりません。 なぜなら毎日換水してたら流れてしまいますし、何よりどうせひと月ぐらいは水槽ってのは立ち上がらないものです。そのうち勝手にバクテリアが後から湧いてきます。これで余計な出費は出ません。水道代はその効果に対してかなり安いです。連日の換水は手間が掛かりますが その手間が掛かった分はひと月後以降にその成果がしっかり現れるのでご心配なく。努力は裏切りません。初心者のうちは修行だと思って換水してください。







そうして2-3週間、水草たちも伸び始め、バクテリアなどもしっかり定着しつつある状態になります。 無駄な出費を極力おさえて体力勝負です。お金をかけてもこれは上手くいかないところになりますので、やはり根気勝負です。という感じで、以上が水草水槽の立ち上げ方と心構えが終了になります。

記事執筆:志藤 範行


6.まとめ

ここではレイアウトにおける光と影の重要性と表現の仕方をご紹介しました。また素材の配置による実践的な演出方法なども解説しました。光と影を意識すると今までよりももっと水草の世界へと没入することができます。 換水も大変ですが、上達の為には避けては通れぬ道です。継続は力なり、続けることができたならいつか実を結ぶことでしょう。 水草レイアウトは、画像にすれば、生き物を使って移りゆくさまを切り取ったワンシーンへ。動画の場合やリビングで楽しむ場合は、多角的にこの小さな生態系を360度楽しめる水で満たされたステキな空間へ。またさらに水草レイアウトも楽しくなってきます。













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