幽霊を追い続ける・・・?スカーレットキングスネーク


 

スカーレットキングスネーク。ミルクスネークの仲間とされていますが、
他種にはない独特の美しさと繊細さがあります。



スカーレットキングスネークとは?

スカーレットキングスネーク Lampropeltis triangulum elapsoides とは、アメリカ合衆国南東部に生息する全長60pほどのナミヘビ科のヘビで、海外でもScarlet Kingsnakeと呼ばれていますが、実際はマウンテンミルクスネークに近い仲間です。 一時は他のミルクスネークとの野生下交雑種(インターグレード)と考えられていた時期もありました。現在でも本種をミルクスネークの亜種に含まず、独立種とする考え方もあります。非常に鮮やかな色彩をしていますが無毒です。 ミルクスネークの色彩や模様は有毒のサンゴヘビに擬態していると考えられています。

地上性で森林や草原に生息していますが隠蔽性が高く、日中は倒木や石、落葉の下などに潜んでおり、あまり人目につかないそうです。野生下では主にトカゲや小型のヘビ類、齧歯類などを捕食していると考えられています。 やや癖のあるヘビですが、その美しさから人気は高く、根強い愛好家が国内外に存在します。


「最も美しいキング」と本種を讃える愛好家もいます。
 


飼育方法

飼育環境

ごく一般的なヘビ飼育のスタイルで構いませんが、乾燥に弱い一面があるので、ウェットシェルターなど多湿な場所を必ず設置するようにしましょう。

夜行性なので強い光源は必要ありません。蛍光灯タイプの物を使用すると良いでしょう。水にも入るので、水場は常設します。さほど高温は好まないようなので、飼育温度は27℃前後に設定するとよいでしょう。


スカーレットキングスネークの体色は成長しても色褪せることはありません。
 


管理について

スカーレットキングネークは他のミルクスネークやキングスネークよりも神経質な一面があります。個体によっては激しく噛みついてくるものもいます。なるべくハンドリングは避けたほうがよいでしょう。


攻撃態勢に入ったスカーレットキングスネーク。
 


エサについて

マウスに餌付いていれば飼育は難しくありませんが、中にはトカゲやヤモリを好む個体もいます。マウスに餌付いていても、消化力がさほど強くなさそうなので、毛の生えたマウスは避け、ピンクマウスを与えた方が良いでしょう。

スカーレットキングスネークはミルクスネークの中で最も小さい亜種であり、最大でも60p程度にしかなりません。生まれたばかりのベビーは非常に小さく、海外のブリーダーは生まれてから約1年間はピンクマウスの尾や手足などを強制給餌で与えて育てるそうです。


体は細身で、頭部も小さいので、あまり大きなエサを与えないほうがよいでしょう。
 


スカーレットキングスネークの幽霊的進化


“赤が黄色に触れていれば死人なり♪
赤が黒に触っていれば大丈夫だよ、ジャック♪”


強烈な神経毒をもつサンゴヘビは人々に恐れられており、それに擬態するミルクスネークを見分けるため、上記のような覚え歌が現地には伝わっているそうです。昔、環境調査中に捕獲したミルクスネークの中に私がサンゴヘビを混ぜるという悪戯をして、先生に凄く怒られた事があります。

スカーレットキングスネークは20以上ある亜種の中で、最もサンゴヘビへの擬態に成功していると言われています。そんなスカーレットキングスネークの擬態について、非常に興味深い研究が近年発表されました。

述したように、スカーレットキングスネークは有毒のサンゴヘビに擬態した体色を持っていますが、ノースカロライナ州の一部の地域ではサンゴヘビが絶滅してしまい、それに擬態するスカーレットキングスネークが生き残ってしまいました。

その地域のスカーレットキングスネークを精査したところ、サンゴヘビと共存していた1970年代よりも一層、サンゴヘビに似てきたそうです。モデルとなるサンゴヘビが絶滅しているにもかかわらず・・・です。

さらに調査を進めると、現在もサンゴヘビと共存しているフロリダ州のスカーレットキングスネークにはそういった傾向は無く、むしろサンゴヘビが絶滅したノースカロライナ州のスカーレットキングスネークのほうが、フロリダ州の個体よりサンゴヘビに似ているそうです。

つまり、モデルとなるサンゴヘビはいないのに、スカーレットキングスネークはどんどんサンゴヘビに似てきている、ということです。まるで絶滅したサンゴヘビの幽霊を追いかけているかのように・・・。 普通に考えれば、モデルとなる有毒種がいないならば、擬態する方はどんどん大雑把になってくると思うのですが・・・

こうなった原因の一つとして、ヘビ類の主な捕食者である鳥類が関係しているのではないかと言われています。鳥類は広い活動範囲を持っているので、他の地域でサンゴヘビが有毒であることを学習しており、 ノースカロライナ州のスカーレットキングスネークもどんどんサンゴヘビに似る事によって、生存率を高めているというものです。

モデルであるサンゴヘビを失ったノースカロライナ州のスカーレットキングスネークはこれからどうなるのでしょう?もしかしたら、ある時点で捕食者達が無毒であることに気付き、一斉に彼らへ攻撃を開始するかも知れません。 もしかしたら、ある時点で彼らは擬態をぱったり止めてしまうかもしれません。それとも・・・?


強い神経毒を持つサンゴヘビの仲間(トリニダード島にて撮影)。
 


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