カメ界の暴君! オオニオイガメの仲間
カメの中でも特にパワフルなオオニオイガメ属について紹介します。
オオニオイガメの仲間とは?
オオニオイガメの仲間は、カメ目ドロガメ科オオニオイガメ属に含まれ、世界中にミツウネオオニオイガメ Staurotypus triporcatusと サルヴィンオオニオイガメ Staurotypus salviniiの2種類しかいない小さな属です・・・が、そこらのカメでは束になっても太刀打ちできないほどのパワーと存在感を持った仲間です。

一見地味なカメですが・・・
ミツウネオオニオイガメ
まずは、オオニオイガメ属の模式種(属の代表)であるミツウネオオニオイガメを紹介します。
ミツウネオオニオイガメは別名をスジオオニオイガメ、メキシコオオニオイガメとも呼ばれ、メキシコ、グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラスなどに分布しています。
最大甲長は38cmに達し、属中最大で、同時にドロガメ科でも最大種です。名前の通り、楕円形の甲羅には3つの筋状のキール(隆起)があります。
このキールは同所に生息するワニに甲羅をかみ砕かれないために発達したと考えられています。流れの緩やかな河川や湖などに生息し、水生傾向が強く、ほとんど陸に上がることはありません。
頭部は大きく、大きな目と力強い顎を持っています。腹甲は小さく、手足に発達した水カキがあります。これはオオニオイガメが強い防御力を持つと同時に、優れた捕食者としての能力も獲得しているといえるでしょう。
食性は肉食傾向の強い雑色で、野生下では昆虫、甲殻類、魚類、カエル、ヘビ、小型のカメ、水鳥、果実、水草、時にはワニの幼体まで食べてしまうそうです。
性質は荒く、攻撃的なので取り扱いには注意が必要ですが、オオニオイガメの仲間は一部に根強い愛好家が存在しており、繁殖個体も流通しています。



特に白味が強い固体は“ホワイトマーブル”と呼ばれ、珍重されます。


ものから、放射状の模様が入るものまで、様々です。



サルヴィンオオニオイガメ
続いてオオニオイガメ属のもう一つの雄、サルヴィンオオニオイガメについて紹介します。
サルヴィンオオニオイガメは別名をグアテマラオオニオイガメとも呼ばれ、グアテマラ、エルサドバドル、メキシコ南東部などに分布しています。
なお、種小名であり和名にもなっている“サルヴィン”という名前は、イギリスの動物学者であったOsbert Salvin(1835−1898)への献名に因みます。
最大甲長は25cm。オオニオイガメは2種しかいないので、必然的に属中最小種になります。そして同時にドロガメ科で2番目に大きなカメです。
体の構造や生態はミツウネオオニオイガメによく似ています。ミツウネオオニオイガメほどではありませんが、甲羅には3本のキールが入り、頑丈な顎を持っています。


個体にもよりますが、鼻先がオレンジ色の個体が多いようです。

個体にもよりますが、雄は細かい網目模様が入ります。



オオニオイガメの飼育
オオニオイガメの飼育は難しくありません。ほぼ完全な水生生活者なので、大きめのケージに水を張っただけの、シンプルな環境で飼育できます。オオニオイガメは水を汚しやすいため、 底砂などは水質の悪化につながるので、使用しない方が無難です。注意点としては、低温に弱い一面があるので、水温は28℃前後を維持するようにしましょう。

餌について
カメ専用の人工飼料で構いません。繁殖個体は何でもよく食べます。野生個体は飼育開始当初は餌付きが悪い場合がありますが、そういうときは、 匂いが若干強い飼料(大型魚の餌である『カーニバル(キョーリン)』や『キャット(キョーリン)』など) を与えると効果的です。基本的に強健な種類なので、極端に体重が落ちていなければ、心配ないでしょう。
単独飼育が基本
オオニオイガメは性質が荒いので、単独飼育が基本です。同種でも同じケージに入れれば、喧嘩や共食いが始まります。

繁殖のため雄と同居した際、喧嘩で下嘴の一部が欠けてしまいました。
咬まれないように注意!
先述したように、オオニオイガメは気性が荒く、攻撃的です(もっともそこが本種の魅力と言えなくもありませんが)。飼育している間に多少はおとなしくなるものの、やはり過信は禁物です。
そもそも、カメという動物は他の爬虫類と比較しても咬む力が強いグループです。かつて、カミツキガメという種類がペットとして流通していました(現在は特定外来生物に指定されており、飼育不可です)。
このカミツキガメはスピーディーでトリッキーな動きをし、剃刀のように“切れる”嘴を持っていたのに対し、オオニオイガメは動きはさほど素早くないものの、万力のような力で“かみ砕く”顎を持っています。
まさにパワーファイターという言葉がぴったりの生物です。大型個体を扱う時は、甲羅の後部をしっかりと持つようにしましょう。

筆者は20年近く飼育していますが、まだ咬まれたことはありません。
オオニオイガメ特集、いかがでしたでしょうか?個人的にはミツウネオオニオイガメもサルヴィンオオニオイガメも、ルックスはもちろんの事ながら、 その気性の荒さも含めて、非常に魅力的なカメだとおもいます。安易な飼育は勧められませんが、カメ好きならば一度は飼育してみたい仲間でしょう。