静謐かつ上品 ハスオビビロードヤモリ

ハスオビビロードヤモリとは
ハスオビビロードヤモリOedura castelnauiはオーストラリア北東部に位置するクイーンズランド州のヨーク岬半島周辺に分布するヤモリの仲間です。ビロードヤモリ属には現在21種が含まれていますが、それらの中でも比較的早くからペットトレードに登場していたため、目にする機会の多いヤモリであるといえるでしょう。
また、属名のOeduraとはギリシャ語で『膨らんだ尾』を意味し、本属の成体が太い尾部を持つことを表しています。種小名のcastelnauiとはフランスの博物学者であるFrancis de Laporte de Castelnau(1802−1880)へ献名(生物の命名において、特定の人物に敬意を表して名前にその人の名前を組み込む慣習のこと)されたものです。
英名では“Northern Velvet Gecko”や“Castelnau's Velvet Gecko”と呼ばれ、漢字表記では斜帯天鵞絨守宮となります(漢字にするとなんだかイカツイですね)。
特徴
全長13〜18p(頭胴長7〜9p)で体重は20〜30g。眼は大きく、四肢はやや短く指先には趾下薄板があります。成長すると尾部が栄養を貯めて太くなるため、全体的にややずんぐりとした、ボリューミーな見た目です。 幼体時は黒褐色と白色の帯模様ですが、成長にともない変化し、成体では背面に黄色〜橙色で黒色に縁取られた灰白色の帯模様が入り、全体的に柔らかな光沢を放つ、大変美しいヤモリになります(触り心地も非常に滑らかです)。 飼育下における寿命は15〜20年と考えられています。
生態
野生下ではやや乾燥した森林や林内の岩場などに多く見られ、樹上棲で樹皮の下や岩の割れ目などを棲家とします(あまり高所には登りません)。
夜行性のため夜間に昆虫などの節足動物を捕食しますが、小型のトカゲなどを食べることもあります。なお、ビロードヤモリ属は食べられる時にたくさん食べて栄養を尾部に貯蔵し、食料の少なくなる乾季(5〜10月)は蓄えた栄養を消費して乗り切ります。
繁殖形態は卵生で雌は一度に2個の柔らかい殻に包まれた卵を年に数回、樹皮や岩の割れ目の中に産卵します。
飼育について
ハスオビビロードヤモリの飼育について簡単に説明します。
ケージについて
湿度は弱いですが、蒸れには弱いため通気の良いケージを使用します。サイズはペア(♂1×♀1)やトリオ(♂1×♀2)でも60p(幅)×45p(高さ)×45p(奥行)あれば良いでしょう。 さほど活発というわけではなく、動きが比較的穏やかなので小型のケージでも飼育自体は可能ではありますが、やはり本種のような美麗種は大きめの爬虫類飼育専用ケージでばっちりレイアウトして飼育するのがよいでしょう。
レイアウトについて
床材にはある程度湿度を維持できる園芸用の赤玉土などが適しています。レイアウトには観葉植物や流木などを使用しますが(中身が中空のコルクパイプなどもシェルターとして優れています)、本種は“縦に張り付く”よりも“水平に張り付く”ことを好むため、それらを意識してレイアウトを組んでやりましょう。
使用ケージ:フォーダブルレプタイルガーデン 6045S スライドドア
輸入された当初は、輸送状態が悪く、飼育データなどがほとんど無かったため、飼育の難しい種類とされていました。現在は様々な問題が改善され、以前にくらべて飼育も難易度もさがりましたが、 いまだにはっきりとした飼育方法は確立されておらず、少しクセのあるトカゲといえます。もっとも、それらを全部ひっくるめても、お釣りがくるくらい素晴らしいトカゲだとは思いますが…。
照明について
夜行性なので紫外線は必要ないという意見もありますが、ビロードヤモリ属を15年ほど扱ってきた経験から設置したほうが圧倒的に良いと思います(体色が美しく発色し、脱皮がスムーズになり、餌食いがよくなる傾向があります)。使用する照明のタイプは爬虫類飼育専用に開発されたUVBを5〜6%含む蛍光灯タイプで構いません。照射時間の目安は夏季は12〜14時間。冬季は8〜10時間です。
温度について
26℃〜28℃であまり大きな温度変化は必要ありません。
湿度について
50〜60%を保ちますが、夜間に照明を消した際、一時的に80〜100%まで上げてやると活性が上がることがあります。なお、脱皮前(多くの場合は体色がややくすみます)は湿度をやや高く(80%前後)維持してやるとよりスムーズに脱皮を行えます。
餌について
体のサイズに合ったコオロギやレッドローチに栄養剤を添加して与えますが、クレステッドゲッコー(オウカンミカドヤモリ)用に開発された人工飼料を食べるものもいます(それのみで飼育されている例もありますが、中には頑なに食べない個体も見られます)。なお、基本的に夜間に採餌を行うため、飼育者がその光景を見ることは稀です。
水入れについて
水入れは常設しますが、そこから直接飲むことは少ないので、毎日照明を点灯すると同時に霧吹きをしてあげてください。
多頭飼育について
幼体時は多頭飼育も可能ですが、成長にともない雄は縄張り意識をもつようになり、個体によっては他の雄に噛みつくなどの排他的行動を見せることがあります。よって、飼育は単独かペア、もしくはトリオがお勧めです。なお、雄が未成熟の雌と交尾するのを防ぐため雌雄共に生後18ヵ月を超えてから同居させるといでしょう。
管理について
餌の食べ残しなどはなるべく早く取り除き、目立った汚れなども小まめに掃除しましょう。そして2〜3ヵ月に一度、床材を全て取り換え、流木なども熱湯で消毒する大掃除を行いましょう(掃除の間はヤモリたちをプラケースなどに入れて隔離しておきましょう)。
ハンドリングについて
前述したように、動きは比較的穏やかで、触り心地も非常に良いためハンドリングしたくなりますが、ストレスになるためあまりお勧めできません。
しかしどうしてもハンドリングしたい場合は以下の点に注意して行ってください。
- @逃げられないように周囲を整理整頓する。
(いきなり飛び降りて家具の隙間などに入られたら、大変です) - A上から掴むのではなく、下や横からすくいあげるように手に乗せる。
- B決して強く掴まない。保定する際は雛鳥を優しく包むように(強くつかむと鱗や皮膚が損傷します)。
- Cハンドリング時間は15分以内。
- Dヤモリの食後・食前はハンドリングしない。
完璧なヤモリの1つだと思います
筆者はもともとトッケイヤモリなど“大型でアグレッシブ”なヤモリが大好きでした。トッケイこそ“至高のヤモリ”だと思っていたので(今でも思っていますが)、2000年頃に本種を見たときは「綺麗なヤモリだな」とは思いましたが、個人的に飼おうとは思っていませんでした。しかし、この仕事に携わる内にビロードヤモリ属と関わる時間が増え、年を重ねるごとに考えを改めさせられました。
本種はその美しい色彩はもちろんのこと、サイズも大きすぎず、小さすぎず、動きも比較的穏やかで、飼育にも難しいところが少ないという、愛玩用として“完璧なヤモリ”の1つだと思うようになりました。
この静謐かつ上品なヤモリは心の成長を遂げたレディース&ジェントルメンな皆様に特にお勧めの逸品です。ゆったりとソファーに座り、紅茶を片手に緑溢れるレイアウトケージをゆったり眺めていただければと思います(ヤング&フレッシュな若者にはトッケイがお勧め。溢れる熱意で巨大トッケイを育成し、毎晩トッケイの鳴声を聞きながらビールを飲み、何事にもアグレッシブかつスピーディに挑戦すべし!)。
ゆっくりと落ち着いた環境で眺めていたいヤモリさんです。

















