デカい!速い!ちょっと痛い! ワキヒダフトオヤモリ


 


ワキヒダフトオヤモリとは

ワキヒダフトオヤモリGehyra marginataとはインドネシアのモルッカ諸島(ハルマヘラ島、テルナテ島、モロタイ島、カイ島)に分布する大型のヤモリの仲間で、ハルマヘラジャイアントゲッコーの別名も持ちます。 なお、どういうわけか本種は古くからタンヨクフトオヤモリGehyra voraxの名称で流通することが多いのですが、こちらはフィジーやトンガに分布するよく似た別種です(見分け方としては、ワキヒダフトオヤモリは灰色〜茶褐色ですが、タンヨクフトオヤモリは黒色や黄色を帯びるものが多く、タンヨクフトオヤモリの方が大型で尾部や指先が太くなっています。 虹彩の色もワキヒダフトオヤモリは緑系、タンヨクフトオヤモリは赤茶色系と言われていますが、こちらははっきりしません)。
英名では“Halmahera Giant Gecko”や “Giant Moluccan Dtella”、“Ternate Dtella”と呼ばれています。ちなみに、欧米の愛好家の間では“Poor Man's Leachie(貧乏人のツギオミカドヤモリ)”と呼ばれることもありますが、両種は全く異なる魅力に溢れた存在であるため、比べること自体ナンセンスです。

 

特徴

全長25〜30pに達する大型種で、幅もあるためかなり見応えのあるヤモリです。側面や指趾の皮膚はややダブついており、指趾の間には大きな水掻きもあります。何のためにあるのかははっきりしていませんが、樹上生活への適応だと考えられています(大型ケージで飼育すると木々の間を飛び交うように移動するため、空気抵抗を大きくする効果があるのかもしれません)。 また、指趾の先には鋭い爪があります。体色や模様は個体によって様々ですが、灰色〜茶褐色で不明瞭な暗褐色の細かい斑紋が散らばるものが多く、ある程度の変色能力を有しています。



眼の色は緑系とされますが、個体差があります

側面や四肢の皮膚はダブついています

指先に鋭い爪があり、素手で扱うとちょっと痛いです

尾部は扁平で、太く力強いです

生態

野生下では湿度のある熱帯林やマングローブ林に多く見られますが、人家付近に棲みついている場合もあります。樹上棲で産卵時の雌以外が地上に降りてくることはほとんどなく、夜行性のため日中は樹洞や樹皮の下に潜んでいることが多いようです。肉食中心の雑食で昆虫や小型の爬虫類、果実、花蜜などを食べます。 また、鳴声を発する事もありこれは同種間におけるコミュニケーションに役立っていると考えられています(特に繁殖期の雄は縄張り意識が強く、他の雄が近づくと「ゲゲゲッ!」と低い声で威嚇します)。
繁殖形態は卵生で雌は一度に1〜3個(多くの場合2個)の卵を地中に産卵します。なお、決まった繁殖期などは無いようです(飼育下では1〜2ヵ月毎に2〜4回産卵することもあります)。飼育下では10〜15年生きた記録があります。



飼育について

ワキヒダフトオヤモリの飼育について簡単に解説します。

ケージについて

比較的高さがあり、通気の良いガラスケージが適しています(指先の爪を傷つける可能性があるためメッシュケージはお勧めできません)。単独飼育ならば(幅)60 ×(高さ)45 ×(奥行)45pでも飼育は可能ですが、広ければなお良いです。

レイアウトについて

床材は湿らせた水苔や赤玉土などある程度湿度を維持できるものが適しています(私は通常は赤玉土で管理し、脱皮が近くなると水苔に変えています)。生きた観葉植物や流木などを配置してヤモリが落ち着ける環境を整えてやりましょう。

照明について

夜行性なので無くてもよいという意見もありますが、やはりあったほうが美しく発色し、脱皮もスムーズに行えるようです。爬虫類専用に開発された蛍光灯タイプのものが適しています。照射時間の目安は夏季は12〜13時間。冬季は10〜11時間です。

レイアウト例。ケージ内には光が差し込まない暗所も用意しましょう
(画像では中央の流木に空洞があり、ヤモリの棲家として機能しています)

使用ケージ:フォーダブルレプタイルガーデン 6045S スライドドア

温度について

25〜28℃であまり大きな温度変化は必要ありません。

湿度について

70〜80%を保ちますが、夜間に照明を消した際、一時的に90〜100%まで上げてやると活性が上がることがあります。なお、脱皮前(多くの場合は体色がややくすみます)は湿度をやや高く維持してやるとよりスムーズに脱皮を行えます。

餌について

体のサイズに合ったコオロギやレッドローチに栄養剤を添加して与えますが、クレステッドゲッコー(オウカンミカドヤモリ)用に開発された人工飼料も好むものが多いです。なお、ピンクマウスを食べる個体もいますが、常用は避けましょう(月に1〜2回程度で構いません)。

水入れについて

水入れを常設しますが、毎日照明を点灯すると同時に霧吹きもしてあげてください。

多頭飼育について

幼体時は多頭飼育も可能ですが、成長にともない雄は縄張り意識をもつようになり、個体によっては他の雄に噛みつくなどの排他的行動を見せることがあります。よって、飼育は単独かペア、もしくはトリオがお勧めです。

管理について

餌の食べ残しなどはなるべく早く取り除き、目立った汚れなども小まめに掃除しましょう。そして2〜3ヵ月に一度、床材を全て取り換え、流木なども熱湯で消毒する大掃除を行いましょう(掃除の間はヤモリたちをプラケースなどに入れて隔離しておきましょう)。

ハンドリングについて

モチモチした肌触りが最高な本種ですが、以下の理由によりハンドリングは不可です。鑑賞用と割り切ってください。

  • @動きがめっっっちゃ速い(落ち着けば気に入った場所でじっとしていますが、危険を感じるとダッシュします)!
  • A強く掴むと皮膚がズル剝けます(防御機構の1つと考えられています)。
  • B引っ張ると指先の爪が損傷することがあります。
  • C指先の爪がちょっと痛い!

なお、トッケイなどとは異なり攻撃性は低いですが、噛むときは噛みます。掃除の際など、移動させねばならない場合は、プラケースなどで追い込むとよいでしょう。

繁殖について

本種は見た目も美しく、ボリューミーで、飼育にも難しいところが少ない素晴らしいヤモリですが(取り扱いには注意が必要ですが)、なぜか国内繁殖例が多くありませんので、わかっていることを以下に箇条します。

  • @雄は生後2〜3年。雌は生後3〜4年で性成熟に達します(飼育下では成体であっても繁殖行動に入るまで2年くらいかかることがあります。ゆっくり環境に慣らしていきましょう)。
  • A交尾の際に雌が雄に噛まれて傷つくことがあります。
  • B雌は交尾後4〜6週間で産卵します(雌の妊娠を外部から観察するのは困難です。光に透かしても体内の卵は観察できないと思います)。
  • C地中に産卵するため、交尾を確認したら(もしくは雌に雄の歯形があったら)、やや湿らせたパーライトなどを5p敷き詰めた産卵床をケージの隅(なるべく暗い場所に)設置します。
  • D卵の管理温度は27℃前後に設定し、やや乾燥したパーライトに埋めて管理します。空中湿度は必要ですが、卵に水滴がかかるようなことはあってはなりません。
  • E卵は4〜8ヵ月で孵化します(このタイプのヤモリにしては卵の期間が長いです)。
  • F孵化した幼体は親とは別のケージで、できることなら個別に管理します。

いつ飼うか?今でしょ!

大きくて見応えがあり(動きは速いですが)、落ち着いた体色にも味があり(日本人好みの渋い色彩だと思います)、飼育にも難しい部分が少ないという(個人的にはツギオミカドヤモリよりも簡単だと思います)、鑑賞用としては素晴らしいヤモリです。 しかしながら、前述したように国内での繁殖例は少なく、知名度もさほど高くないようです。理由ははっきりしませんが、本種が比較的安価かつ時期によってはインドネシアからまとまった流通があるからかもしれません。 しかしながら、分布域が限定されているため、今後の先行きは不安定です。トッケイのようにワシントン条約に記載されたり、流通量が激減する可能性も決して低くありません。本記事で少しでも興味をもっていただけた読者諸賢がおられましたら、是非今から繁殖を視野に入れた飼育をお勧めします。 そしてこの素晴らしいヤモリに“Poor Man's Leachie”なんてナメた名前付けた人々を鼻で笑ってやりましょう。ふんっ!


見応えのあるヤモリさんです。もっと人気があっても良いと思うのですが・・・


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