アンチグリーンを使った新しいコケ対策と除去、水草の成長促進も。
水草、特に前景草が照明やpH、栄養分といった条件を満たしているにもかかわらず、突然成長が止まることがあります。 この時、コケ取り生物の導入や換水と同時に、アンチグリーンを添加し、葉の表面をクリーニングすることによって、再び水草が成長することがあります。 本ページではそのメカニズムや、使い方や注意点、具体的な事例をご紹介します。
目次
1.コケ対策と除去の概要、メカニズム
1-1.葉表面を顕微鏡で観察
成長スピードが落ちたと感じる水草の葉表面を顕微鏡にて観察すると、細長いラン藻がびっしりと付着していることがあります。 ラン藻は目で見ると面状に付着していますが、顕微鏡で見ると線・糸のような形状をしています。 また肉眼では藻類が見えない場合でも、葉表面を手で触るとヌルヌルしてることがあります。 その場合、細菌のような物体が葉に大量に付着している場合もあります。
1-2.アンチグリーンによってこれらのコケ、細菌類をクリーニング除去
葉表面にラン藻をはじめとしたコケ類、細菌類が多く付着した場合、炭酸ガスや養分の吸収を妨げると考えられます。 こういった水槽・水草に対してアンチグリーンを使用し、コケ、細菌類を除去することによって、水草の成長スピードが回復することがあります。 特に難易度が高い前景草の絨毯、マット、草原の成功率が高くなります。 また、アンチグリーンは水中の有機物を酸化分解し、最終的に水になるため、残留や着色が無い点もメリットです。
1-3.ラン藻の発生と地域の水
実は水草の育成、ラン藻の発生はその地域の水質によって難度が異なり、特に珪酸、硬度、硝酸、リン酸がどれだけ含まれているかによって大きく影響を受けます。 当社の試験水槽では硝酸が10ppm程度(非常に多い)含まれている水道水を使用しており、残念ながらこれらを栄養源とするラン藻が発生しやすい水質です。 このような地域では、本ページにご紹介しているアンチグリーンによるクリーニング方法が威力を発揮するようです。 逆に、これらの物質が少ない水(一般的に綺麗な水と呼ばれる)の地域では、そこまでしなくてもよい場合もあります。
2.使用方法
2-1.ラン藻の予防対策と水草の成長促進として
@水槽セット後、予防策として。または水草の成長スピードが落ちてきたと感じた時。アンチグリーン15cc / 60cm水槽(w600*d300*h360、栄養系ソイル使用時)を週1〜2回、換水後に添加。
この時、ろ過器、ポンプなどは動かしたままでも大丈夫です。
栄養系ソイルを使用していない場合は、分量を1/5〜1/3に減らして様子を見てください。
A2〜4カ月経過し、生物ろ過と水草の成長が安定してきたら、アンチグリーンの添加を一旦停止します。
B大規模なトリミングなど、水草の成長スピードが悪化したと感じ、ラン藻が発生し始めた場合、@にもどって再添加をはじめ、しばらく様子を見ます。
2-2.デメリット、注意点
栄養系ソイルで使用する場合、アンチグリーン取扱説明書に記載されている使用方法より添加量が多いため、次のことにご注意ください。
2-3.すでにラン藻が発生している場合
アンチグリーンの取扱説明書に記載されている方法でご使用ください。
3.コケ除去の実例集
新しいアンチグリーンの使い方によって、コケの除去に成功した事例をご紹介します。 すべて、60cm水槽(w600*d300*h360)にエーハイムクラシック2213を使用。 一回当たりの換水量は70%〜80%程度です。
3-1.事例1
- 底床:栄養系ソイル
- 照明:TWINSTAR 600E
- 二酸化炭素:1滴/秒
- 栄養剤:トロピカ茶液、緑液、カプセル
- 換水頻度:週1〜2回
- pH:6.0〜6.5
- 水温:26℃
水槽立ち上げ後、1カ月後にラン藻が発生し、ヘアーグラスやストロギネ、ニューラージパールの成長が止まる。 その後、アンチグリーンによるクリーニングを施し、水草の成長が回復。そして写真(AFTER)のように。 水槽安定後は、換水を週1回、アンチグリーンは予防的に隔週に15cc添加。
3-2.事例2
- 底床:栄養系ソイル
- 照明:TWINSTAR 600E
- 二酸化炭素:1滴/秒
- 栄養剤:トロピカ茶液、緑液、カプセル
- 換水頻度:週1〜2回
- pH:6.0〜6.5
- 水温:26℃
セット後1カ月後にラン藻が発生。 特にヘアーグラスは諦めそうになるくらい酷くラン藻が付着。 アンチグリーンによるクリーニングを施し、約2か月で写真(AFTER)のように成長が回復。 ヘアーグラスが伸びすぎている感はあるものの、状態安定後は換水を週1回行い、予防的に15ccのアンチグリーンを添加。 1年間維持中。
3-3.事例3
- 底床:栄養系ソイル
- 照明:TWINSTAR 600E
- 二酸化炭素:1滴/秒
- 栄養剤:トロピカ茶液、緑液、カプセル
- 換水頻度:週1〜2回
- pH:6.0〜6.5
- 水温:26℃
- ろ過材:立ち上がり済みのろ材を流用
水槽立ち上げ後、約1.5カ月でラン藻が発生し、グロッソスティグマの成長が停止。 アンチグリーンによるクリーニングを施し、成長が回復。 ロタラ類、グロッソスティグマともに物凄い成長スピードで、アンチグリーンの予防的使用も不要なほど。 週1回の換水のみで半年間維持。水槽内の栄養成分がうまく水草に回っているものだと考えられる。
3-4.事例4
- 底床:栄養系ソイル
- 照明:TWINSTAR 600E
- 二酸化炭素:1滴/秒
- 栄養剤:トロピカ茶液、緑液、カプセル
- 換水頻度:週1〜2回
- pH:6.0〜6.5
- 水温:26℃
立ち上げから毎週1〜2回の換水後にアンチグリーン15ccを予防的に添加。 コケに悩まされることなく、順調に約4カ月経過(写真 AFTER)。 ただし、本水槽はソイルの使用量が通常より少なく、青華石も多く使用しているため、pHが上がりやすい要素が多い。 そのため、市販のpH降下剤を添加し、pHを6.0〜6.5に保つよう水質調整を行った。 たまに水質調整を忘れてしまう時もあったが、その時はニューラージパールグラスの成長が顕著に悪くなった。 アンチグリーンを予防的に添加するが、別の要素で水草の成長が悪くなった事例。
3-5.事例5
- 底床:栄養系ソイル
- 照明:TWINSTAR 600E
- 二酸化炭素:1滴/秒
- 栄養剤:トロピカ茶液、緑液、カプセル
- 換水頻度:週1〜2回
- pH:6.0〜6.5
- 水温:26℃
- ろ過材:立ち上がり済みのろ材を流用
立ち上げから毎週1〜2回の換水後にアンチグリーン15ccを予防的に添加。 前の水槽同様、全くコケに悩むことなく完成。赤色の有茎草と、緑のヘアーグラスのコントラストが美しい。
3-6.事例6
- 底床:栄養系ソイル
- 照明:TWINSTAR 600E
- 二酸化炭素:1滴/秒
- 栄養剤:トロピカ茶液、緑液、カプセル
- 換水頻度:週1〜2回
- pH:6.0〜6.5
- 水温:26℃
- ろ過材:立ち上がり済みのろ材を流用
立ち上げから毎週1〜2回の換水後にアンチグリーン15ccを予防的に添加。 前の水槽同様、全くコケに悩むことなく完成。 前景はヘアーグラスとキューバパールグラスの両方を植えたが、ヘアーグラスの勢いが強く、キューバパールは負けてほぼ見えない。 また、岩の上部からニューラージパールグラスが垂れて岩を覆いながら成長するねらいがあったが、アンチグリーンが得意としないコケに負けてしまい、リトライする。
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