アクアリウム水槽に発生する苔(コケ)の種類ごとの原因と対策
アクアリウム水槽に発生する苔(コケ)の種類ごとの原因と対策目次
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1.アクアリウム水槽で発生する苔(コケ)について知る
1-1.アクアリウム水槽で発生する苔(コケ)
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1-2.苔(コケ)の分類と特徴
●アクアリウム水槽に発生するコケの分類 淡水中に生えるコケは全部で15000種ほどあるとされていますが、大きく下記の4つ(@〜C)に分けることができます。またそれぞれが持つ光合成色素が異なるため、使用中の照明の波長分布によって生えやすい、生えにくいコケがあることになります。 |
【コケの分類と光合成色素】
@珪藻 ・・・・・クロロフィルaとクロロフィルc |
A緑藻 ・・・・・クロロフィルaとクロロフィルb |
B紅藻 ・・・・・クロロフィルaとフィコビリン |
C藍藻 ・・・・・クロロフィルaとフィコビリン |
【各光合成色素が利用できる波長の吸収ピーク】 ・クロロフィルa→433(藍〜青)nmと666(赤)nm ・クロロフィルb→462(青)nmと650(オレンジよりの赤)nm ・クロロフィルc→450(青)nm ・フィコビリン類→500(青緑)〜560(黄緑)nm |
●それぞれのコケの特徴
@珪藻 【見た目・形状】ガラス質(酸化珪素)の殻に包まれた細胞を持つコケで、クロロフィルaとcの光合成色素を持っており、茶色く見えます。ガラス面や石・流木の表面に付き、柔らかい綿状、もしくはマット状の形状をしています。 |
【発生しやすい環境】生物ろ過が立ち上がる前の新しく立ち上げた水槽、珪酸が多い環境の場合に発生しやすく、無機の窒素とリンでも増殖しますが、どちらかと言えば有機の窒素とリンを消費して増殖する傾向があるようです。 |
【対策】アクアリウムではよく発生するコケで、柔らかい形状をしており、アユの主食であることからも分かるように、様々な生物が好んで食べてくれるコケです。少量がガラス面に発生した場合はスポンジやスクレーパーで除去するのが一般的ですが、多量に増殖してしまった場合は、水中の余分な栄養塩(窒素やリンなど)濃度を水換えや水草による吸収で低く保ち、アクアリウム用のコケ抑制剤も併用するなどして対処します。 |
ガラス面に付く珪藻 | 珪藻の写真と対策はコチラ |
A緑藻 【見た目・形状】水草をはじめとする高等植物と同じクロロフィルaとbの光合成色素を持っており、水草に近い明るい緑色に見えます。柔らかい(硬い)糸状、綿状、マット状、水中・水面に浮遊するもの(青水・グリーンウォーター)など形状は様々です。 |
【発生しやすい環境】生物ろ過が立ち上がり、しばらく時間経過した後に発生しやすく、また窒素とリン入りの肥料を入れすぎると発生しやすいことからアンモニア、硝酸塩、リン酸といった無機の窒素とリンを消費して増殖するようです。古い水槽でろ材が汚れすぎているときにも発生しやすい傾向があります。 |
【対策】珪藻同様、アクアリウムではよく発生するコケで、少量がガラス面に発生した場合はスポンジやスクレーパーで除去するのが一般的です。色々な種類の生物がこのコケを好んで食べてくれますが緑藻はその形や硬さ、発生する場所が多岐にわたるため、それぞれに合う生物の選定が重要です。水中の余分な栄養塩(窒素やリンなど)濃度を水換えや水草による吸収で低く保ち、それでも発生してしまう時は手で除去したり、アクアリウム用のコケ抑制剤を使用して対処します。 |
緑藻の写真と対策はコチラ |
B紅藻 【見た目・形状】アサクサノリやテングサは海水の紅藻として有名ですが、淡水のアクアリウムに発生する紅藻はクロヒゲゴケの仲間、カワモズクの仲間に限られるようです。クロロフィルaとフィコビリンを光合成色素として持ち、濃い緑や灰色、黒色に見えます。クロヒゲゴケは枝分かれしない短い糸状のフサフサした見た目、カワモズクは枝分かれした糸状で表面が粘質に覆われています。 |
【発生しやすい環境】生物ろ過が完全に立ち上がった長期維持されている硝酸塩や珪酸が多い環境で発生しやすく、無機の窒素とリンを多く消費して増殖する傾向があるようです。 |
【対策】好んで食べてくれる生物が少なく、また強固に生えていたり、水草に絡みついていることが多く、手やブラシでの除去もしにくい厄介なコケです。水中の余分な栄養塩(窒素やリンなど)の濃度を、水換えや水草による吸収で低く保ち、予防に努めます。コケの生え始めの柔らかいうちは生物も食べてくれますが、しっかり成長してしまったものは木酢液系のコケ抑制剤を使用して対処します。 |
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C藍藻 【見た目・形状】他のコケと異なり、核膜を持たない光合成細菌に分類されます。光合成色素はクロロフィルaとフィコビリンを持ちます。淡水のアクアリウムに発生する藍藻は濃い緑色でべっとりとしたマット状に広がるタイプで、青臭い独特のニオイがします。増殖スピードが非常に早く、鑑賞面で好ましくないのはもちろんのこと、水草の葉の表面で発生すると水草の成長を妨げるなどの弊害も出ます。 |
【発生しやすい環境】枯れた水草の葉、代謝によって生じた水草由来のデトリタス、魚の残りエサやフンといった有機物、硝酸塩などの栄養塩が多い環境で、水槽内の淀んだ場所に発生しやすい傾向があります。 |
【対策】柔らかく剥れやすいのでホースなどで吸い出すことで減らすことはできますが、増殖スピードが速いため、複合的な対策が必要になります。また藍藻を好んで食べてくれる生物も少ないため、物理的に除去しながらコケ抑制剤を使用する事が最も効果的です。カミハタから発売されている「アンチグリーン」は藍藻専用と言ってよいほどよく効きます。 |
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2.包括的な苔(コケ)の予防
コケには必ず何かしらの生える原因があります。その原因を取り除かずにコケ取り生物やコケを減らす薬品を使っても効果は薄くなってしまいます。まずは、この項目をチェックして、コケが生えやすい管理方法になってしまっていないか確認することから始めていただくことをオススメします。 |
2-1.水中の養分を減らす
コケも水草と同じ植物であり、必要な養分にも大きな差はありません。したがって水草が成長する環境ならコケも自然に発生してきます。水草の成長に必要な量以上に余分な養分が水中に存在していると、コケがその養分を消費して大量発生に繋がり、最悪の場合、水槽崩壊となってしまいます。水草にとっても養分は重要ですが、成長のための必要最低限の量になるように調整することが大切です。ここでは水中の養分を減らす方法をいくつかご紹介します。 |
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エーハイム リン酸除去剤 |
カミハタ 茶ソイル |
2-2.照明の調整
養分の時と同じ考え方でコケも水草と同じように光によって成長します。発生してしまったコケに合わせて、照明を調整することで抑制が可能です。ここではその方法をいくつかご紹介します。また照明を考える前にチェックすべきなのが水槽の設置場所です。日光が当たる場所に水槽を設置している場合は、間違いなくコケの一因になっていますので設置場所を変えるか遮光すると効果的です。 |
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2-3.市販のコケ抑制剤の使用
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2-4.紫外線殺菌灯の使用
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2-5.手で除去する
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2-6.苔(コケ)を食べる生物の導入
ここまでコケを抑制するための様々な方法を解説してきましたが、先述しましたように水草が育つ環境では少なからずコケも育ちます。予め予防的にコケを食べてくれる生物を入れておくことでコケが発生しづらい環境にし、普段の水槽管理をラクにすることができます。コケ取り生物の導入は昨今の水草水槽ではほぼ必須の条件となると思います。 |
コケ取り生物それぞれの特徴や導入時のコツはコチラで詳しく紹介しています。 |
3.アクアリウム水槽で出やすい苔(コケ)の具体的な種類と対策
実際に水槽で発生しやすいコケについて、さきほど説明した4つの分類と照合しながらその対策を解説します。 |
3-1.茶ゴケ(珪藻の仲間)
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3-2.緑ゴケ(緑藻の仲間)
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3-3.糸状、トロロ状のコケ(珪藻の仲間、緑藻の仲間)
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3-4.黒ヒゲ状のコケ、カワモズクの仲間(紅藻の仲間)
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3-5.藍藻類(光合成細菌の仲間)
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アンチグリーンを用いたコケ対策や水草育成事例を詳しく紹介しています。 |
3-6.水面に浮かぶ油膜に似たコケ(緑藻の仲間)
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3-7.アオコ・青水(グリーンウォーター)(藍藻・緑藻の仲間)
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【苔(コケ)の除去や掃除をしてくれる生物たち】
コケ取り生物にスポットを当てて、それぞれの生物が好んで食べるコケの種類や導入匹数の目安、導入時の注意点などをご紹介していきます。
水草水槽マニュアル【アンチグリーンを使った新しいコケ対策と除去】
アンチグリーンを添加し、葉の表面をクリーニングすることによって、再び水草が成長することがあります。本ページではそのメカニズムや、使い方や注意点、具体的な事例をご紹介します。