ミニアナコンダ ヒロクチミズヘビ

ヒロクチミズヘビとは
ヒロクチミズヘビHomalopsis buccataとはバングラデシュ、カンボジア、タイ、ベトナム、インドネシア、ラオス、マレーシア、シンガポール、ネパールといったアジア南部に広く分布する水棲のヘビの仲間です。
水棲のヘビは日本にはキクザトサワヘビ(国内希少野生動植物種に指定されており、飼育はできません)くらいしかいませんので、あまり馴染みがないかもしれませんが、アジアには40種ほど分布しており、本種は食用としても利用されています。
英名では“Linne’s Water Snake”や“Puff-faced Water Snake”、“Masked Water Snake”と呼ばれます。
特徴
全長50〜120p(雌のほうが大きくなります)で体重は200〜400gのものが多いですが、妊娠した雌は1sを超えることもあります。
頭部はやや扁平で幅広く、胴部は太くてがっしりとした体躯をもちます。幼体時は黄白色〜橙色に黒褐色の太い帯模様が並んでいますが、成長にともない変化し、成体ではオリーブ色から灰褐色に不明瞭な赤褐色〜暗褐色の帯模様となります。
本種はミズヘビの仲間としては大型の部類に含まれ、そのどっしりとした存在感から愛好家の間では“ミニアナコンダ”の愛称があります。
なお、後牙類のため上顎の後方に位置する牙から毒を分泌しますが、人間にとって危険はほぼ無いとされています(人によっては吐き気や局所的な腫れなどの軽度の症状が現れることもあるようです。ちなみに、私はたぶん50回くらいは噛まれてますが、何らかの症状が出たことはありません)。
生態
野生下では流れの緩やかな河川や池、沼、水田、用水路に生息し、水から出ることはほとんどないようです(インドネシアで観察したことがありますが、幼体は基質が泥のごく浅い場所で、成体は水深1〜2ⅿほどの場所で多く見られました)。 夜行性のため夜間にエビなどの甲殻類や魚類、両生類を捕食します。繁殖形態は胎生で雌は一度に2〜20匹の幼体を出産(平均9匹)します。繁殖のピークは10〜3月ですが、明確な繁殖期はもたないという説もあります。
飼育について
ヒロクチミズヘビの飼育について簡単に説明します。
ケージについて
水棲なので基本的には熱帯魚と同じアクアリウムで構いませんが、水中で体を固定できるようアク抜きした流木などを配置します(脱皮の際にも役立ちます)。水草なども入れてやるとよいシェルターにはなりますが、力が強いため乱されやすいです。 入れるならポットタイプの大きなものがお勧めです。底砂なども特に必要ありません。なお、カメ用の浮島などを配置するとそれに乗って休んでいることもありますが、使用しないようならば取り除いても構いません。 水深は幼体の場合は10〜20p程度でよく、成体でも“ヘビが水底から首を伸ばして呼吸できるぐらい”がベストです(あまり水深があるとヘビが体力を消耗してしまうことがあります)。
レイアウトについて
床材にはある程度湿度を維持できる園芸用の赤玉土などが適しています。レイアウトには観葉植物や流木などを使用しますが(中身が中空のコルクパイプなどもシェルターとして優れています)、本種は“縦に張り付く”よりも“水平に張り付く”ことを好むため、それらを意識してレイアウトを組んでやりましょう。
照明について
特になくても構いませんが、本種のような水棲生物の飼育にはあったほうが圧倒的に楽しいです(照明を付けると水面からスッと静かに潜る姿など、すごく雰囲気があります)。
温度について
26℃〜28℃であまり大きな温度変化は必要ありません。
水温について
25〜28℃が適温となります。冬場は熱帯魚用のヒーターで加温しましょう(ヘビが直接触れて火傷しないよう、カバーを設置ましょう)。
水質について
弱酸性〜中性が適しています。新しい水ではなく、10日〜2週間ほど汲み置きした“こなれた水”が理想的です(観賞魚を飼育している場合は、それらの水を上手く利用するとよいでしょう。当社ではディスカスの飼育水などを流用しています)。 なお、濾過はあった方がよいですが、あまり本格的なものは必要ありません。投げ込み式フィルターなどが適しています(外部ろ過などを使用する場合は水流が強くなりすぎないよう注意が必要です)。
餌について
餌にはヘビの頭部と同程度の大きさの金魚やドジョウ、エビなどを与えます。単一の餌を長期にわたって与えると状態を崩すことが多いような気がしますので、様々なものをバランスよく与えるようにしましょう。 給餌頻度は個体の大きさや状態によって変わりますが、目安としては、幼体ならば4〜5日に一度、成体ならば1週間に一度です。なお、食べ方はヒゲミズヘビのように洗練されたものではなく、水中で口を開けて追いかけ回すという、パワータイプです。
多頭飼育について
ケージが広ければ多頭飼育しても問題は起こりにくいですが、稀に餌の取り合いやそれに起因するトラブルが発生します。多頭飼育をする際はなるべく同じ大きさの個体で(大型個体に小型個体が巻きつかれて衰弱することがあります)、全ての個体がしっかりと餌を食べられているかを確認しましょう(餌をとるのが上手い個体もいれば、下手な個体もいます)。
管理について
テスターなどで水質を定期的にチェックし、悪化してきたと感じたら水換えを行いますが、水質の急激な変化に注意しましょう(全換水ではなく1/2〜1/3ずつ換水するのがお勧めです)
ハンドリングについて
ハンドリングは不可です。純粋に鑑賞用と考えてください。なお、性質そのものは大人しい個体が多いですが、怒ると頭部を振り回すようにして噛みつき、一度噛みつくとなかなか放してくれない個体もいます。ミズヘビの仲間はなんだかポヤッとした顔つきのものが多いですが、“やるときはやる子”です。
その他注意点
本種はおそらく最も流通量の多いミズヘビの仲間であり、他のミズヘビに比べても飼育難易度が低いと言えます(一番飼いやすいのはヒゲミズヘビで、本種はその次席と言えます。ちなみに、シナミズヘビは皮膚病に罹りやすく、オナガミズヘビは水質や水温に敏感で、オオミズヘビは餌にうるさい一面があります。)。 しかしながら、国内ではあまり長期飼育例が多くありません。これにはいくつかの原因があるように思いますが、最も大きいのは寄生虫でしょう。本種は内部寄生虫に酷く侵されていることがあり、ある日突然口から大量の寄生虫を吐き出して死ぬことが稀にあります(初めて見たときはマジでドン引きしました。トラウマになりました)。 餌を食べているのに痩せているような場合は動物病院に相談して駆虫してもらいましょう。
水棲種の魅力
水棲種の魅力は、何と言ってもその“不思議な生態”でしょう。水槽内をズルッと泳ぐその姿は圧巻ですし、口から水泡を吐きながら水底に沈んでいく姿はどことなくコミカルで、餌の魚を水中で追いかけまわして丸呑みする姿にはちょっと恐怖も感じます。 また、餌にマウスを与えなくてもいいというのもメリットかもしれません(冷凍庫にマウスを入れて家族や奥様にキレられた愛好家は私だけではないはずです。また、家族に「ヘビはダメ!」と言われていても、ミズヘビの仲間なら「ウナギだよ」とか「ポリプテルスだよ」みたいな言い訳も通じるかもしれません)。 ミズヘビの仲間はかなり個性的な仲間なので好みの別れる所だとは思いますが、一度は飼育してみたい不思議なグループです。
観賞魚や水草で培ってきたその技術を、この特殊なヘビさんで是非発揮してみてください

















